ふぐ料理の花形「ふぐ刺し」
高級魚ふぐ料理の花形と言えば、ふぐ刺しです。
皿の模様が透けるほど薄く切られ、1枚ずつ花びらのように盛り付けられたふぐ刺しはもはや芸術品です。
ふぐ刺しの見た目の華やかさも嬉しいですが、その1枚には、ふぐの味を一番感じられるような配慮や食べやすさの考慮が隠されています。
ふぐ刺しはプリプリとした身の歯ごたえを堪能しながら、ふぐの身がもつ甘味と旨味をダイレクトに楽しむことができる一品です。
ふぐ刺しの、旨味溢れる美味しさのひみつに迫りましょう。
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淡白でありながら味わい深い旨味をもつ白身魚のふぐは、その類まれなる旨味を珍重され、数々の美食家たちの舌を喜ばせてきました。
古今東西のあらゆる美食を食べてきた北大路魯山人が「ふぐに優る何物も発見しえない」と言ったほどの美味しさです。
ふぐは日本人が慣れ親しんできた昆布や煮干しと同じである、グルタミン酸とイノシン酸ふたつの旨味成分を併せもっていることが人気の理由でしょう。
あっさりとしながらも噛むほどに甘味が口いっぱいに広がる味わいは、余計な味付けを必要とせず、素材を活かした料理がよく合います。
またふぐは身だけでなく、皮や白子の部位も珍味として評判が高く、様々な食感や味わいが楽しめる魚なのです。
毒をもつ魚として有名なふぐですが、毒を取り除いてまで食べたい魅惑的な美味しさとは、どのような味わいなのでしょうか。
数あるふぐ料理の中でも、王道で人気が高いメニューを取り上げてみました。
それぞれの料理ごとに、調理人に引き出されたふぐの美味しさが隠されています。
部位ごとの特徴と、ふぐが皆に愛され続ける、その美味しさのひみつに迫ります。
~ 目次<contents> ~
高級魚ふぐ料理の花形と言えば、ふぐ刺しです。
皿の模様が透けるほど薄く切られ、1枚ずつ花びらのように盛り付けられたふぐ刺しはもはや芸術品です。
ふぐ刺しの見た目の華やかさも嬉しいですが、その1枚には、ふぐの味を一番感じられるような配慮や食べやすさの考慮が隠されています。
ふぐ刺しはプリプリとした身の歯ごたえを堪能しながら、ふぐの身がもつ甘味と旨味をダイレクトに楽しむことができる一品です。
ふぐ刺しの、旨味溢れる美味しさのひみつに迫りましょう。
まぐろの刺身のように、角のきれいな厚いふぐ刺しは見たことがないと思います。
一般的に、削ぐように薄く切られた刺身は、絵皿に貼りつけるように盛りつけられます。
乳白色の透明感のあるひときれひときれは、はかなげでありつつピンと身が張っていて、凛々しい姿をしています。
ふぐの身質は高たんぱく質、低脂肪で、他の白身魚と比べても群を抜いて脂肪分が低く、筋肉質で硬いのが特徴です。
例えばふぐを他の刺身のように厚く切ると、人間の顎では噛み切れず、いつまでも飲み込むことができないほどの弾力に困ってしまうでしょう。
そのため、ふぐがもつ風味豊かな旨味を丁度よく噛みしめて味わえるよう、料理人が計算した絶妙な薄さに仕上げているのです。
高たんぱく質であるふぐの身には、昆布を代表とする植物性食品に多く含まれるグルタミン酸が非常に豊富に含まれています。
たいやひらめなどの白身魚を、昆布締めにして刺身にすることがあります。
これは保存目的の調理法でありますが、昆布の旨味をたんぱくな白身魚に染み込ませて、旨味を増強させる狙いがあります。
この昆布の旨味を、初めから多く備えもっているのがふぐという魚の強みと言えます。
通常、魚肉も畜肉も新鮮さを求められますが、解体直後は身が硬いため、たんぱく質が分解してアミノ酸が増加し、身が軟らかくなるのを待ってから調理されます。
ふぐ個体の状態にもよりますが、天然のふぐは2~3日、養殖のふぐは1日半程寝かせ熟成したものを刺身にします。
ふぐは他の魚と比べても、たんぱく質の量が多いため、熟成にかかる時間が長いのです。
食感(歯ごたえ)は美味しさに関する重要な要素で、食感がよくないと美味しさを感じられないため、この熟成時間の見極めは美味しさを左右する大切な要素となります。
さらにふぐの身には科学変化が起きます。
硬直が解け始める頃に、細胞内の成分分解によって、旨味成分のひとつイノシン酸を増加させるのです。
煮干しに代表されるイノシン酸は、動物性食品に多く含まれる旨味成分です。
天は二物を与え、ふぐは2種類の強い出汁の旨味を併せもち、その効果が絶大なため、美味しさが溢れる食材と言われているのです。
ふぐの表面をサッと炙り、香ばしさと旨味を閉じ込めた「ふぐのたたき」というメニューがあります。
本来は、表面に付きやすい細菌に火を通し保存性を高めることが目的の調理法で、味を馴染ませるのに「叩く」工程があることから、この名が付いています。
ふぐは生の状態と熱を加えた状態では、食感がかなり違う食材です。
表面を炙って熱が加わることで、たんぱく質の結合が弱くなり弾力のある身がふっくらと柔らかくなります。
そして炙ることにより香ばしさが加わり、余分な水分が抜けることで旨味も凝縮されます。
たたきにすることにより嗅覚と視覚が刺激され、食欲を増す効果もあります。
表面だけを炙るので、中は生の状態を保っていて刺身の要素も残したまま、厚みのある刺身を楽しめる素晴らしい料理法と言えます。
たたきのよさは、食感と旨味を活かした料理へとアレンジがしやすい点にもあります。
王道のポン酢でさっぱりといただくもよし、沢山の野菜と一緒にカルパッチョ風にしたり、寿司ネタとしても抜群の相性を誇ります。
料理のレパートリーが広がる飽きのこない美味しさに、人気上昇中のメニューです。
ふぐ食が禁制だった時代、密かに庶民の間で食されていたふぐは、隠語で「てっぽう」と呼ばれていました。
毒をもつふぐは、当たりところが悪いと命に関わることからそう呼ばれています。
その流れで、ふぐの皮刺しを「てっぴ」と呼ぶことがあります。
てっぴとは、「鉄砲の皮」を短縮した「鉄皮(てっぴ)」が語源と言われています。
皮刺しは、ふぐの刺身に添えられていることが多く、目にする機会も多いかもしれません。
ふぐのコース料理では、先付けとして出されることもあります。
ぷりぷりとした食感が人気のふぐ皮は、コラーゲンが豊富に含まれています。
ふぐは敵を威嚇するために風船のように膨らむことで有名ですが、この伸び縮みする弾力ある皮膚を作っている成分がコラーゲンなのです。
コラーゲンは細胞同士を繋ぎとめる役割があるため、コラーゲンを摂ると肌のハリ、キメが整うという女性に嬉しい成分です。
ふぐの種類によっては皮に毒があり食べられませんが、ふぐの王様トラフグは皮が無毒のため、刺身と共にとても人気があります。
美味しいふぐ皮ですが、その下処理は大変難しく、高度な技術を必要とします。
ふぐ皮の下処理「皮すき」と、ふぐ皮料理について説明します。
皮刺しは、刺身の添え物として置かれていたり、小鉢に入れられてポン酢と和えられたり、煮凝りにして出されたりと、名脇役として人気のある商品ですが、実は下処理にものすごく手間がかかっています。
ふぐの皮は、3層構造になっており、外側2層と内側1層に分かれているのはご存知でしょうか。
内側の身皮(みかわ)と呼ばれる部分は、ごく薄で身肉に付いているため、分離すると身に残ります。
外側2層のうち、一番外側はザラザラとしていて、鮫皮(さめかわ)と呼ばれています。
鮫皮と身皮に挟まれた中間層は、「とうとうみ」と呼ばれる皮があります。
「とうとうみ」は戦国時代の地名から由来し、身皮の隣の皮、つまり三河(身皮)の隣は遠江(とうとうみ)から名付けられたようです。
鮫皮ととうとうみを分離する作業には、経験と高い技術が必要で、料理人の力量が問われます。
また、鮫皮には棘があり、これも包丁で綺麗に取り除かれます。
この鮫皮の棘の処理は、ふぐを扱う技術の中で一番難しいと言われています。
なぜなら鮫皮からとうとうみを分離させる工程や、鮫皮にある刺を除去する工程はいかに歩留まりよく、棘を除去するかがポイントとなってくるので、非常に熟練した技術が必要になります。
また鮫皮から刺を除去する作業は、熟練した料理人にとっても手間な作業のため、近年は鮫皮から刺を除去する皮すき機も誕生し効率化が進んでいます。
食感のよいふぐ皮は、様々な料理にアレンジ可能です。
その代表的なメニューをいくつか紹介します。
ふぐ皮を使用した代表的な料理は、「皮刺し(てっぴ)」と呼ばれるものです。
丁寧に処理されたふぐの皮を、湯引きにして細切りにします。
たっぷりの刻みネギとポン酢をかけて口へ運ぶと、コリコリとした食感とさっぱりした味わいが楽しめ、少し味を引き締めたい方は、お好みで一味をかけて食べると大変美味しいです。
皮の部位によって食感や味わいが変化する点が面白く、鮫皮、とうとうみ、身皮と3種類それぞれの食感を楽しめるよう部位ごとに分けて提供しているお店もあります。
鮫皮はコラーゲンたっぷりでコリコリとした食感が、とうとうみは噛めば噛むほど旨味が広がっていき、独特の柔らかい食感がやみつきになると言われています。
身皮はその名の通り皮に少し身が付いており、皮のプリッとした食感と身の旨味が一緒に味わえる、大変貴重な部位になります。
ふぐ皮の豊富なゼラチン質を利用した、ふぐの煮凝りという料理があります。
ふぐの皮にはコラーゲンというたんぱく質が豊富で、加熱してこのコラーゲンが分解されると濃いゼラチンになります。
ふぐは豊富にコラーゲンが含まれているため、短時間煮詰めると濃いゼラチンになり、そこへふぐの出汁、醤油、みりん、酒などを加え、これを冷やして固めたものが煮凝りです。
煮凝りは栄養的にも大変優れ消化吸収もよいため、フルコースの前菜として出されることも多い逸品です。
涼やかで見た目にも美しく、ふぐ皮の旨味が凝縮しプルプルとした食感が大変美味しい珍味です。
ふぐのしゃぶしゃぶを提供しているお店や、ちり鍋を出している一部のお店などで「皮しゃぶ」というメニューも存在します。
ふぐの皮をさっと湯にくぐらせて、トロトロにやわらかくなった食感を楽しむものです。
身皮を厚めに切って、焼き肉のように炭火で焼いて皮焼きとして出すお店もあります。
またふぐ皮の食感を活かし、豆乳や葛で練った豆腐状の中に細かくしたふぐ皮を加えたふぐ皮豆腐など、様々なアレンジメニューが生み出されています。
このように皮といっても部位により食感が違い、様々な料理方法があり奥深い食材です。
ふぐの料理において、唐揚げは最も身近な料理かもしれません。
きつね色のサックリとした衣と、ふぐの香りが食欲をそそる一品ですね。
シロサバフグなどの中型ふぐが使用されやすく、価格も比較的安価なため、食べる機会の多いメニューです。
トラフグなどの大型のふぐは刺身にされることが多く、小型、中型の身が小ぶりなふぐは一夜干しや、唐揚げに加工されることが多いです。
下関や大阪の居酒屋で、ふぐの唐揚げはよく見る人気メニューです。
老若男女問わず人気の高い、ふぐの唐揚げについて紹介します。
ふぐは熱を加えると、ふっくらとしてホクホクの食感になります。
前に述べたように、ふぐ自体は旨味が強い魚なので、シンプルな味付けのみで充分に美味しく、決して食べ飽きしません。
たかが魚の唐揚げとはあなどれない、極上の唐揚げになります。
骨が付いたふぐの唐揚げは、上品にお箸でいただくより、豪快に手に持ち骨の周りの身までしっかりと堪能したいものです。
骨に近い身ほど、旨味を強く感じられます。
ふぐの身がもつ濃い旨味と、ふっくらとした食感にあなたも虜となるでしょう。
身肉は骨からの身離れもよく、キレイに食べられます。
「唐揚げ」という身近なメニューに変身したふぐは、家庭的で子供にも人気の逸品なのです。
「一夜干し」とはその名の通り、魚に塩を振り一晩外気にあてて干したものです。
最近は、衛生面や品質の安定を図るために外気ではなく、室内で冷風をあてる低温乾燥が主流です。
一夜干しの魅力は、なんと言っても塩が引き出す魚の凝縮した旨味にあります。
一夜干しにすると、適度な水分と共に魚特有の生臭さも抜け、旨味がぎゅっと詰まった深みのある味わいになります。
一夜干しが、ふぐにぴったりの加工方法とも言われる理由についてお教えしましょう。
ふぐの一夜干しは、素晴らしい加工食品です。
さっと塩を振り低温で乾燥させることで、余分な水分を取り除き、旨味を凝縮させます。
一夜干しのメカニズムは、塩を振って干すことによりたんぱく質中の分解酵素が働き、旨味が増すことを利用して加工されます。
ふぐは白身魚の中でもたんぱく質が豊富なため、この手法で旨味がぐんと増すのです。
また一夜干しは生に近い食感が残るため、いろいろな料理にアレンジすることができます。
そのまま焼いて、焼きふぐにするとふっくらとしていてホクホクの身が堪能できます。
またフライや唐揚げ、てんぷらにしてもふっくらとした身と、旨味が詰まった味わいが好相性なのです。
一夜干しとご飯を一緒に炊いて、鯛めしのような炊き込みご飯にしても絶品です。
ふぐの旨味がたっぷり染み込んだご飯は、おかわり必須と言える極上の味わいです。
西のふぐ鍋、東のあんこう鍋と、鍋料理の二大横綱に例えられるふぐちり鍋は、ふぐの旨味を余すことなく味わえる料理です。
ふぐがもつ純粋な旨味がスープに溶け出し、一緒に煮る野菜たちを何倍にも美味しくしてくれます。
「ちり鍋」とは、昆布で取った出汁でメインとなる具材と野菜を一緒に煮る水炊きのことです。
出汁に味がついていないため、ポン酢でさっぱりといただきます。
ふぐ料理の中で、刺身と並ぶ二大看板であるふぐちり鍋、その美味しさのひみつを掘り下げてみましょう。
ふぐのちり鍋は最高のふぐ料理のひとつであり、ふぐを味わいつくす料理と言えます。
ふぐの身質は生のままだと弾力が強く、薄い刺身でなければ噛み切ることができません。
しかし熱を加えることで、ふっくらと柔らかくなり厚い身でも食べることができるのです。
ふぐは美肌を維持するうえで、必要なコラーゲンを豊富に含んだ魚です。
鍋にすることで、プリプリのふぐの身とコラーゲンや旨味たっぷりの出汁まで余すことなく味わえます。
さらにふぐのアラを一緒に煮ることで、より濃い旨味をたっぷり味わうことができます。
鍋料理には様々な味付けがありますが、ふぐの鍋料理にちり鍋が選ばれるのは、ふぐの純粋な旨味成分に理由があります。
ふぐの身は高たんぱく質、低脂肪です。
たんぱく質に多く含まれているグルタミン酸の濃厚な旨味成分を邪魔しない、シンプルな出汁がぴったりなのです。
その濃厚でありながら繊細な旨味を純粋に味わうには、水炊きにし、あっさりとしたポン酢でいただくのが最も相性のよい組み合わせだと言われています。
そしてふぐちり鍋の醍醐味と言えるのは、シメの雑炊です。
ふぐの旨味が溶け出した最高のスープに、野菜の甘味も全て含んだ雑炊は最高の味わいです。
鍋はそこそこしか食べないで、雑炊をたっぷり食べるという人がいるくらい美味しいのです。
ふぐの身やアラから出た旨味溢れるスープは、食べた人の身も心も癒すしみじみとした美味しさがあります。
ふぐちり鍋のメインは、雑炊だと言う人もいるくらい最後まで絶品料理なのです。
ふぐは種類によって有毒部位が異なります。
一般的に皮が食べられる種類のふぐは、ひれも可食部位として扱われています。
ひれはそのまま料理になることはありませんが、よい出汁が出るので日本酒との相性は抜群です。
ひれ酒はもともと物資が乏しい戦時中、劣悪な日本酒を美味しくするために生まれた飲み方でした。
日本酒の品質が安定している昨今では、純粋にいつもの日本酒をワンランク上げるものとして愛されています。
ふぐのひれと日本酒との組み合わせがもたらす、魅力について追ってみましょう。
トラフグを筆頭に皮が可食部位とされる種類のふぐは、ひれも美味しく活用されています。
先ずは、ふぐのひれ酒の作り方を簡単に説明します。
ひれ酒用のひれを入手したら、ひれを焦げないようにあめ色になるまで丁寧に炙ります。
炙ったひれを、熱燗(かなり熱め)に入れ蓋をしてエキスを抽出させます。
ポイントは、通常の熱燗よりかなり熱め(沸騰直前の80℃以上)に燗をしておくことです。
熱い日本酒にふぐのひれを入れることにより、ひれの旨味成分が抽出されやすくなります。
ふぐのひれ酒は、乾燥させたひれの凝縮した旨味と、炙りの香ばしさが溶け合い、日本酒の風味を何倍にも引き立ててくれます。
言うなれば、純粋なふぐの旨味とお米の旨味の結晶である日本酒が渾然一体となった究極の日本酒なのです。
ふぐのひれ酒が気になるけれどお酒が弱いという方は、ひれ酒に火を付けて日本酒のアルコール分を飛ばす方法もあります。
アルコール分を飛ばしたひれ酒は、まろやかになりふぐの凝縮した旨味が抽出された極上のふぐスープと言えます。
白子とは、オスの生殖腺で精巣のことを指します。
精巣は産卵期を間近に控えた冬に大きく成長するため、最も美味しくなる1月から2月になるとふぐ料理店のメニューに登場してきます。
白子は一匹のオスに一対しかない貴重な部位なので、ふぐ料理の中でも最高級の材料となります。
また白子は希少価値に加え、舌の上でとろける旨さはなんとも言えない正に至極の味わいをもちます。
ふぐ料理のスター白子料理について、説明します。
白子は珍味中の珍味で、最も口にする機会が多い魚がタチと呼ばれるたらの白子なのではないでしょうか。
数ある魚の中でもふぐの白子は、濃厚でほのかに甘く、そしてとてもクリーミーな極上の逸品と言われています。
一匹のオスふぐに一対しかない白子ですから、ふぐの価格は白子のあるオスが高く、白子のないメスと比較すると圧倒的に価格が違います。
メスふぐの場合、卵巣は有毒部位として食べることができません。
白子はさっと湯がいて、ポン酢で食べても美味しいのですが、表面をさっと焼いて食べる白子焼きも絶品です。
白子焼きは、白子を丁寧に炙ることにより表面の皮が香ばしく焼け、サクっとした食感に仕上がります。
そして中は、ふつふつとクリーム状の白子が煮え、口にほおばると香ばしい皮の中からとろりとした濃厚な白子が口いっぱいに広がります。
ふぐ料理の醍醐味は、白子にあると言い切る人もいるくらい魅惑的な味わいなのです。
旨さ溢れる白子はどの様な料理にしても美味しく、てんぷら、蒸し物、ちり鍋の具材、白子酒等々日本料理店などで至極の逸品として振舞われています。
ふぐの卵巣は臓器の中でも毒力が強く、一般的に食べられない部位として扱われています。
しかし石川県にのみ伝わる製法で、その強い毒が抜けて珍味として食されている「卵巣の糠漬け」があります。
珍味中の珍味、卵巣の糠漬けとはどのように作られたものなのか、その謎に迫ります。
ふぐの卵巣は有毒部位のため、卵巣の糠漬けは石川県でのみ製造が許可されています。
石川県金沢市の金石、大野地区、白山市の美川地域でのみ製造しているため、生産量に限りがあり珍味中の珍味と呼ばれています。
加賀地方では、江戸時代(1603年~1868年)からふぐやにしんなど沿岸で漁獲されやすい魚種を、樽で糠漬けや粕漬けにする風習がありました。 なぜ猛毒であるふぐの卵巣をも食べようとしたのか、はっきりと分かっていないそうですが、これらの漬物は日持ちがするため、非常用食や食料が少なくなる冬場の貴重なたんぱく源として活用されていました。
粕漬けの深みのある味わいは加賀藩主に代々珍重され、現在でも石川県の特産品として、当時の製造方法が頑なに受け継がれている伝統的な珍味なのです。
製法は樽にたっぷりと塩を入れ、その中に卵巣を漬け込みます。
樽を替えながら1年間~1年間半塩漬けし、その後表面の塩を水洗いし、糠、米麹、唐辛子を加えて一斗樽に漬け込みます。
漬け込んでいる間、樽の縁から魚醤(いしる)を注ぎ入れ、半年~1年程度(できれば2年間漬けるのが望ましいそう)漬け込みます。
卵巣が解毒されるメカニズムは科学的に解明されていませんが、不思議と毒が抜けているのです。
長い期間の発酵により、独特の旨味が生まれ、塩辛いながらも深みのある風味をもつ酒の肴にぴったりの珍味に仕上がります。
現在では、必ず石川県予防医学学会の検査を経て、毒性が消失していることが確認され「検査済之証」シールを貼付されたものだけ出荷が許されています。
相当塩辛いものなので、究極の珍味として珍重されています。
私たち日本人は、甘い辛いといった味覚のなかに、独特の感覚「旨味」を求めて食事をしています。
出汁に含まれる旨味は、和食の決めてとなる部分で、美味しいという感覚は潜在意識の中にあると言っても過言ではありません。
ふぐは日本人の味覚に合った、グルタミン酸とイノシン酸ふたつの旨味成分を併せもっている和食にぴったりの魚です。
単に調理するだけでは味わえない部分を、熟成させたり焙ったりすることで引き出し、最善の状態で食べることができています。
ふぐのシンプルでいて強烈な存在感は料理人の魂を揺るがし、数々の日本料理に仕上げられ愛されてきました。
噛めば噛むほど甘味を感じる上品な身と、プリプリと心地よい歯応えが人気のふぐは、部位ごとの特長を活かし、様々な調理法で日本の食文化を進展させてきたのです。
ふぐの身、皮、ひれ、白子など、異なる食感と味わいがあり、それぞれのよさを生かした素晴らしいメニューが存在します。
刺身、唐揚げ、一夜干し、ちり鍋、ひれ酒、白子焼きなど、部位ごとの違った美味しさがあり、何度も食べたくなる飽きのこない味わいが長年愛されてきた理由のひとつと言えます。
しかし日本人の強いふぐ愛が、猛毒のある非可食部でさえも食べられるように加工してしまうほど、ふぐの不思議な力は人々を魅了してやみません。
美味しさだけでなく、未だに神秘のヴェールに包まれたミステリアスな部分もふぐの魅力ではないでしょうか。
ふぐの旨味を探求し、積み重ねた歴史をふぐ料理ひとつひとつに感じてほしいと思います。
奥深いふぐの味わいに、きっとあなたも虜になるはずです。
[2017-9-14作成/2024-10-11更新]
(c)ふるさと産直村
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