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ふぐ養殖までの試行錯誤と守るべきふぐ食文化

養殖ふぐ

現在、ふぐの養殖業はトラフグ1種のみを育てています。
国内におけるトラフグ生産量の9割以上は養殖ふぐで、その存在は高く評価されています。
近年の日本において、需要の高まりによる商品供給と、日本人の嗜好の変化(肉食傾向への変化)や輸入魚による魚価の低下により、魚価の高い海産物の安定生産という面から高級魚の養殖が盛んに行われています。
商品価値のあるトラフグを安定供給するため、漁業関係者は養殖に力を入れています。
天然トラフグの漁獲量は年々減少しており、非常に高価なものになっています。
また、地球温暖化の影響や乱獲により資源が枯渇寸前となり、水産資源の行く末が危ぶまれています。
そしてその危機的な不足を補うように活気づいたのがふぐの養殖業でした。
ふぐ養殖業の歴史は、昭和8年(1934年)に山口水試瀬戸内海分場でトラフグを数ヶ月という短期間育てたのが始まりです。
多漁で値段が下がる8~10月上旬に確保したトラフグを、高値になる10月中旬まで短期畜養したものでした。
しかし、ふぐの性質は他の魚と異なる部分が多く、養殖は手間やコストのかかる難しいものでした。数々のトラブルを乗り越え、安心できる養殖ふぐが流通されるまでの難航を知る人は少ないでしょう。
旨味溢れる天然トラフグは高嶺の花で、ふぐの養殖が成功しなければ、私たちは伝統ある和食材のトラフグを味わうことができなくなっていたかもしれません。
どのようにしてトラフグ養殖業が確立されてきたのか、ふぐ食を未来へつなげたふぐの養殖業について追ってみましょう。

ふぐ養殖の歴史を辿る

ふぐのイラスト

日本での魚の飼育は鯉が初めてで、景行天皇(71年~130年)が池に鯉を放って美女を誘ったという説話が日本書紀に記されています。
淡水魚の養殖は古くから行われていたようですが、海水魚の飼育というのはごく最近のできごとです。

海水魚の養殖は、昭和2年(1927年)に香川県引田町にある海水池の水門を閉じて稚魚を餌付けしたことから始まりました。
この試験で養殖の可能性を確認できたことがきっかけとなり、養殖産業が始まったと言われています。
商品価値の高い品目の養殖が事業化される中、ふぐも例外ではありませんでした。

しかし、ふぐの養殖については他の魚とは状況が少し変わってきます。
ふぐ養殖が確立されるまでの流れを追ってみましょう。

ふぐ養殖業の歴史

ふぐ養殖の歴史は意外と浅く、昭和8年(1934年)山口県において、安価な初夏のトラフグを高値になる旬の初冬まで飼育したのが始まりと言われています。
その後、岡山県や広島県でも短期畜養は試みられ、戦後の昭和30年代にトラフグの各生産地で越夏畜養(夏を越す期間飼育)が広まりました。

そして、ふぐを捕らえて育てる畜養ではなく、卵や稚魚から人工的に生産していく養殖技術の開発が始まります。

養殖や放流に用いる魚の卵や幼生を種苗と言い、それを取ることを採苗と言います。
トラフグ養殖用の稚魚を確保するべく、昭和39年(1964年)に山口県水産種苗センター(現在の山口県内海栽培漁業センター)で、全国で初めて採苗生産が取り組まれました。

しかしこの頃、天然ふぐの漁獲量は十分あったため、ふぐの養殖はニーズが見いだされず、養殖業は成り立っていませんでした。
それは、昭和40年(1965年)に締結された日韓漁業協定の影響による天然ふぐの漁獲量増大に一番の要因があります。
日韓漁業協定とは、沿岸から12海里(約22km)の排他的経済水域(他国から侵害されずに独占的に漁業に関する権利を有する領域)を取り決め、日本と韓国の間で漁場争いの終止符を打った協定です。

それまで日本近海で行われていたふぐ漁が、いずれの国の支配下にないより遠くの水域(東シナ海、黄海)へと広がり、ふぐの漁獲高が伸びていったのです。

しかし、韓国や中国漁船の技術の向上や乱獲などで、新たに日本の漁場への影響やトラブル等が増えてきます。
この協定は1998年に終了するに至っています。

そのような背景の中、継続されていた養殖への試みは実り、ついに昭和48年(1970年)初めて養殖ふぐが商品として出荷されました。
昭和50年代に入ると、ようやく種苗生産の取り組みが活発化し、養殖事業も徐々に普及し始めました。
そして昭和54年(1979年)に、養殖ふぐは市場に流通するようになります。

その頃から地球温暖化の影響や乱獲により天然ふぐの漁獲量は減少傾向に入り、平成に入ると天然ふぐと養殖ふぐの生産高は逆転してしまいます。

平成22年(2010年)には、流通しているトラフグの96%を養殖ふぐが占め、天然ものは大変稀少となりました。

需要の高いトラフグ養殖

状態のよい天然トラフグには、養殖トラフグの5~6倍もの高値がつく時があります。
天然ものの価格には及びませんが、養殖トラフグは他の魚種と比べると1匹あたりの単価が高いため、養殖業者の方たちから商売として魅力ある魚種だと支持されています。

ふぐ養殖業者は、いかに天然ものに近い品質のふぐを育てられるか研究を重ね、それぞれの養殖場では餌や飼育環境に工夫をこらし、天然ものの味わいに近づいたふぐが生産されてきていると言われています。
海面養殖事業の中でも、ハマチ、マダイ、ヒラメ、に次いでトラフグは生産量上位に位置し、需要の高い高級魚として将来がとても有望視されています。
天然トラフグの漁獲量減少は続いているため、今後ますます養殖トラフグの役割は高まっていくことでしょう。

伝統的な日本料理の高級食材として、ふぐを支持する多くの根強いファンが存在します。
高級なトラフグを少しでも低価格で提供できれば、より多くの人にふぐへの関心を寄せてもらうことが期待できます。

また、なんといっても養殖ふぐの魅力は、年間通して美味しいトラフグを安定供給できる点です。
ふぐの旬は冬と言われていますが、今後夏にさっぱりとしたふぐ刺しやふぐのたたきを楽しむ流れが全国に広まっていくかもしれません。

ふぐ養殖とホルマリン

ふぐはデリケートな性質のため飼育には手間がかかり、エラに寄生虫がつくなどの病気になりやすく、養殖業者の悩みはつきませんでした。

ふぐの養殖が確立されていった昭和の時代、ふぐの健康を守るために消毒剤としてホルマリンを使用している養殖業者が多く存在しました。
いけすの中へホルマリンを流し入れると、菌の繁殖が抑えられ、寄生虫を防ぐことができたのです。

しかしホルマリンには発がん性があり、人体に有毒な物質です。
当時、養殖におけるホルマリン使用に関しての法律規制はありませんでした。
1980年~2000年までの間に、水産庁から養殖業者へ「魚介類に薬剤としてホルマリンを使うことを極力避けること」や「卵や稚魚には例外的に使うことを認める」といった内容が5回ほど通達されただけでした。

しかし、ホルマリンの流出による周辺海域の環境悪化(真珠のアコヤ貝へのダメージやプランクトンの減少など)の問題が浮上し、人体への悪影響も心配されはじめ、2000年2月に水産庁より「全面使用禁止」が通達されました。
それでも実際、養殖業者は直ぐにはホルマリン使用を中止できず、水産大学の調査や自治体の指導により、徐々に使用を控える傾向をたどります。

2009年になってようやく、ほとんどの養殖業者はホルマリンの使用を中止しました。
国内において水産庁は、ホルマリンを使用したトラフグの仕入れを禁止しています。

養殖ふぐへの期待を高めるさなか、消費者の信頼が崩されることなく安心したトラフグ料理を楽しみたいものです。

養殖ふぐの実情

海上養殖場

養殖に使用する稚魚の確保には、二通りの方法があります。
一つは、完全養殖と呼ばれる方法で、親となるふぐを養殖し産卵させ、人工的に稚魚を育てていく方法です。
もう一つは、産卵時期の天然魚を漁獲し、産卵→授精→孵化させた稚魚を人工的に育てていく方法です。

養殖ふぐの多くは、親魚となる成魚を天然ふぐに頼っています。
しかし、品質のよい元気な天然親魚を入手するには競争率が高く、減少している天然ふぐの資源確保も兼ねて養殖業者の方々は苦労されているようです。

「天然トラフグ」減少を助ける放流ふぐ

天然ふぐの減少が加速し、絶滅の危機を覚えた関係者の方々は、資源を守るべくふぐの稚魚を放流する試みを始めています。
栽培漁業センターなどで春に人工受精したふぐの卵は、6月~7月にかけて4㎝ほどの稚魚に育ち海へ放流されます。

実は、ふぐは生まれ育った故郷へ帰ってくる習性があると言われています。
放流するふぐには印をつけ、どのように外海を回遊してどこに戻ってくるのかが研究されています。

この回帰能力が活かされて、放流事業はしっかりと成果を出しており、今後ふぐの資源を守るために必要不可欠なものとなっています。
今や天然ふぐ水揚げ量の3~4割を占めるようになった放流ふぐですが、天然ふぐと比べて3~4割安い価格で取引をされているのが実情です。

今後美味なるふぐの食文化を守っていくためにも、天然資源の確保という面からふぐの放流事業の拡大に期待がかかっています。

枯渇する天然ふぐにどう手を差し伸べるか

親ふぐの驚くべき価格

ふぐ養殖では、親魚の確保、人工受精、受精卵のふ化、稚魚の育成、成魚まで育成、出荷までが一連の流れとなっています。
この中で最も労力を費やす作業は、親魚の確保と言われています。

春の産卵時期に、成熟した卵巣をもっている雌のトラフグと、成熟した精巣(白子)をもっている雄の2~4㎏前後のトラフグを親魚として求めます。
近年まで天然ふぐから親魚を確保する状況が続いていました。

ふぐ食のハイシーズンである冬に出荷できるよう成長を合わせるため、早い時期に卵を取ることが重要とされ、3月の親魚はとても競争率が高くなります。
市場は親魚を求めて養殖業者からの注文が殺到するため、ふぐの価格はとんでもなく跳ね上がってしまい養殖業者を悩ませています。
トラフグ業界の需要も上がる時期は、天然親魚1匹あたり100万~150万という信じられない程の高値がつくこともあるのです。

今は九州大学と長崎県水産試験場の指導で、天然親魚から効率よく採卵する方法が確立され、徐々に養殖場で育った成魚を人工的にコントロールして卵巣を成熟させる方法が普及してきています。
現在親魚は、ふぐの産卵期に天然ふぐを漁獲するか、親魚を人工的に育てるかで次の世代のふぐを確保しています。

2種類の養殖方法

ふぐの養殖方法は、大きく分けて2種類あります。
その2つの違いを見てみましょう。

海面養殖

ふぐの養殖法で、一般的なのは海面養殖です。
海面養殖は、沿岸の静かな海面を利用して筏を浮かべ、囲い網を入れていけすを作る方法です。
設備投資があまりかからない分、自然環境の影響を受けやすいので、ふぐの安定した品質を保つために細やかな衛生管理を行うなど、労働力と技術が必要になります。

ふぐは生まれた時は毒をもっておらず、成長と共に食べる餌から毒を体内に蓄積させる性質をもっています。
養殖のふぐは無毒だと勘違いされる方もいますが、海面養殖のふぐは高確率で毒化しています。

何か心配な気もしますが、ふぐにとって毒の成分は、体調を維持するのに重要な働きがありストレスを軽減させることがわかっています。

海面養殖のふぐは天然ものと同様に、海水と一緒に入ってくるプランクトンなどから毒を摂取し体内へ蓄積します。

しかし、天然ものと異なり限られたいけすの中だけで育つため、天然のように十分な毒を溜めることができません。
そのため、ストレスから仲間を噛んだり、自分より強い毒をもつ他のふぐに噛みつき、仲間から毒を摂取しようとすることがあります。

噛み合いが起きると、そこから病気になって死んでしまったり、体に傷がつき商品価値が下がるなど、全体の歩留まりが悪くなります。
そこで成長に合わせて2~3回、1匹ずつ手作業で歯切りをすることにしています。

これは噛み合いによる傷の防止と、いけすの網を噛み切らないようにする対策で、他の養殖魚には見られない工程です。

陸上養殖

海と完全に切り離された場所にいけすを作り、ふぐを養殖する方法で正式には「閉鎖循環式陸上養殖」といいます。
閉鎖循環式陸上養殖は、ろ過装置を使用することで海水を使用することなく、水質の成分を科学的に調整し、飼育水をコントロールする方法です。

海から離れた山の中でも養殖することができ、自然の影響を受けることなく育成を完全にコントロールすることができます。
水質を安定させることで、病気やウイルスの影響を減らし、そのぶん歩留まりがよく生産性が安定しています。

またふぐは水温が低くなると餌を摂取する量が落ち、成長が鈍くなります。
そのため水温を一定に保つことで、季節毎に温度差の負担を受けにくく、年間通して成長スピードが安定します。
飼育環境を最適な状態に保てるため、デリケートなふぐのストレスを軽減でき、噛み合いなどのリスクを減らすことができます。

さらに外海から完全に遮断しているため、ふぐの毒化を防ぐことができ、理論上は無毒のふぐを生産することができる点が、陸上養殖の付加価値と言えます。

飼育方法としては完璧なのですが、設備投資が高額になり、海上養殖に比べると電気代などのランニングコストがかかります。
養殖トラフグの市場価格が下がると採算割れする場合があり難しい部分もあります。

そこで陸上養殖をする業者は、「無毒のトラフグ」としてブランドを立ち上げ、付加価値をつけようと試みていますが、現在のところ国からの認可はおりていません。
ふぐの毒は当たると命に関り、毒のメカニズムが完全に解明された訳ではないため、無事故の保証が絶対ではないとして許可がおりないのです。

飼育環境を完璧に整えてもふぐのストレスを完全に取り除くことはできず、歯切りは海面養殖と陸上養殖共通の作業で、人件費と手間のかかるふぐならではの作業と言えます。

トラフグの食文化を支える養殖ふぐ

陸上養殖中のふぐ

「ふぐ刺し」や「ふぐちり鍋」をはじめとするふぐ食文化は、日本人が命がけで切り開いて確立した誇るべき日本料理のひとつです。

地球環境の変化や需要拡大による乱獲は、天然ふぐの数を著しく減少させてしまいました。
ふぐが増えるスピードを超えて、乱獲を続け減ってしまった天然魚の資源を元に戻すことは、長い年月を要し容易ではなくふぐ食の未来は危ぶまれました。
その危機を救い今日までトラフグの食文化を支えてきたのは、養殖ふぐの存在です。

近年、日本で食用と認められている全22種の天然ふぐ漁獲量と、養殖トラフグ1種の生産量は、年間それぞれ約5,000tとほぼ同量で推移しています。
その中で、ずば抜けて味のよいトラフグに関しては、9割を養殖ふぐが占めています。

養殖をしてみて、それまで知られていなかったふぐの様々な生態が発見されてきました。
ふぐにとって毒は精神安定剤のような役割があること、ふぐは餌から毒素を摂取すること、仲間が密集した環境はふぐにとってストレスになること、ふぐの噛む力がとても強いことなどです。

ふぐ特有の生態は、トラフグ養殖を確立させる上で、養殖業者の方を大いに悩ませました。
どうすればふぐのストレスを軽減し、健康に成長できるのか、が1番のポイントでした。

いけすの中で飼育するふぐを、密集させ過ぎないように数を調節し、互いに噛み合いになって傷をつくりにくいよう歯切りを行い、時間と労力をかけてふぐの養殖業を確立させていきました。
試行錯誤の末、成魚となったふぐの卵巣を成熟させ、卵を育てる種苗生産の技術は、ようやく人工的にコントロールすることが可能となってきました。

品質の優良な親魚からは、生命力のある元気な稚魚を生産できることができるので、すなわち養殖業の良い結果が出せることになります。
この技術の進歩は、天然親魚の確保や価格奮闘による影響を避け、安心して計画的な生産が期待できるでしょう。

また年間通して安定した供給が可能な養殖ふぐは、ふぐを扱う料理店から見ても有難い存在です。
魚の養殖は人々の食生活を豊かにしてくれると共に、守るべき地球の資源再生を助けてくれる、これからの時代なくてはならない存在だと感じます。
急速に成長しているふぐの養殖事業は、未来のふぐ食の主役としてさらなる成長を遂げて、私たちへ美味しい味わいを届けてくれることでしょう。

天然ふぐと養殖ふぐの違い、本当に知っている?

2017-9-13作成/2018-10-9更新]

下関ふぐ本舗

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