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ごまふぐには未だ謎のテトロドトキシン解毒料理がある

ごまふぐ卵巣粕浸

生き物の名付け由来には、見た目を比喩し付けられた名称が多くあります。
背中に粒々のゴマ状の斑点をもつ、ゴマフグというふぐがいます。
お腹の白さとは対照的な青黒い背面と、その境となる側面にキレイな黄色のラインが入っていて、レモン色のシリビレが特徴の中型のふぐです。
日本国内において、食用とされているふぐの一種で、トラフグ、マフグ、サバフグと共に、日本のふぐ食を支える需要の多い魚です。
中でもゴマフグは、あっさりとしたクセの少ない白身なので料理のアレンジに幅があり、味噌汁や唐揚げ、干物といった生活に密着した料理となって愛されています。
天然ふぐ漁獲量全国一位に輝く石川県には、ふぐを加工した発酵食品が伝統料理として継承されています。
例えば、ふぐの卵巣は、そのひとつで5~6人を殺傷する毒をもち、全面的に食用を禁止されているのですが、日本で唯一石川県でのみ製造が認められている幻の珍味があります。
それはゴマフグの卵巣を原料とした「ふぐの卵巣のぬか漬け」です。
奇跡の料理と呼ばれる「ふぐの子」は未だに解明されない毒素消滅の理由を追究し、世界中から注目を浴びている郷土料理です。
ゴマフグとはどのような特徴をもつ魚なのか紹介すると共に、ゴマフグを原料に作られている珍味についてもまとめました。

ゴマフグの特徴

ゴマ

ゴマフグは、太平洋側より日本海側に多く生息しています。
食用に指定されていますが、可食部分である筋肉(身)にも弱い毒をもち、欲張って一気に1kgも摂取してしまうと中毒になる恐れがあります。

しかしゴマフグは、みずみずしい身質で幅広い料理に使える調理しやすい魚です。
トラフグに比べるとややあっさりとしているため、素材そのものの旨味を味わう刺身よりも、汁物や唐揚げなどひと味加えた調理法が合うようです。
ゴマフグが漁獲できる地元では、鮮度のよさを活かし刺身を昆布ジメにして旨味をアップさせ寿司ネタとして用いているお店もあります。

お手頃な価格帯で人気のあるゴマフグとはどのような魚なのか見てみましょう。

ゴマフグの基礎知識

ゴマフグは、フグ科トラフグ属の魚です。
学名をTakifugu stictonotus、英名をSpottyback puffer(背中に斑点の多いふぐ)といいます。
北海道以南の沿岸地域、とくに日本海側に多く生息しており、北限はロシア極東域のオルガ湾で、さらに韓国、中国、黄海、東シナ海にも分布しています。
沿岸の岩礁や砂底などの浅瀬を好んで生息し、水深27mまで生息していることが確認されています。

養殖はされておらず、流通しているゴマフグは全て天然ものとなります。
見た目は、背面から体上部は青みがかった黒色で、名前の通りゴマ状の小さな黒斑が細かく広がっています。
ふぐの仲間内では細めの体で、黒い斑点が密集している黒っぽい背面と白い腹部には小さな棘が密生しています。
体側の背と腹部の境に細い黄色線が一本入っており、顔から背中に向かって段々と色が薄くなっています。
背ヒレと尾ヒレは黒色ですが、臀ヒレは鮮やかなレモンを思わせる美しい黄色です。

全長40㎝前後の中型種で、卵巣及び肝臓は猛毒、胆のうや皮は強毒、筋肉と精巣(白子)は弱毒、腸は無毒とされており、筋肉と精巣のみ食用として流通しています。
皮は、個体によって毒性に強弱の差があり、強い毒をもつ個体もあることを考慮して食用は禁止されています。

ゴマフグは俗称をもっており、金沢ではサメフグ、神戸や下関や北九州ではサバフグ、大阪ではゴマなどとも呼ばれています。
この俗称で気にすべき点は、標準和名でシロサバフグ、クロサバフグという身も皮も無毒の種類がいることです。
ゴマフグは全体に毒を帯びた種類なのでサバフグとは可食部位が異なり、標準和名と俗称を混同しないように注意が必要です。

ちなみに、ゴマフグにおける筋肉と精巣(白子)の弱毒とは10~100MUの毒の強さをもち、100g~1kg以下の摂取で致死量となる毒量がある部位です。
例えば目安として、ふぐちり3~4人前に使われるふぐ身は約400g前後、一夜干し(18cm)1枚は約50gですので、可食が認められているとはいえ多量摂取は危険となります。

テトロドトキシンという不思議なふぐ毒、その謎に迫る

ゴマフグのお勧め料理

ふぐの旬は冬のイメージが強いでしょうが、ゴマフグは産卵期の春から初夏にかけて漁獲量が上がります。
この時期に雄のゴマフグからとれる濃厚で栄養豊富な白子は好評で、短い期間の食材として市場に出回ります。

淡白な身質のゴマフグは、汁物や下味を付けた唐揚げなど、そのあっさりとした身質を活かした調理法が多用されています。
下味をつけてカラリと揚げた唐揚げは、おつまみにもぴったりで、子供にも食べやすく幅広い年齢層の方に支持される味わいです。

焼き物では、さばかれた身をそのまま焼くより、塩を振り一晩干して余分な水分を抜いた一夜干しがお勧めです。
旨味がぎゅっと凝縮された一夜干しは、塩味のほか、石川県の伝統的な調味料である魚醤「いしる」を使用したものも味わい深く人気があります。

また鍋物の具材として、辛味が食欲をそそるふぐのチゲ鍋や、いしるを用いて深みを出したふぐのいしる鍋も石川県を中心に食されています。

ゴマフグを用いた石川県の珍味たち

石川県の風景

ふぐは種類ごとに有毒部位が異なる魚です。
また臓器によって毒性の強弱にも差がありますが、全体的に卵巣は猛毒の臓器で食用は禁じられています。
もともと毒性の強い卵巣ですが、産卵期の卵巣は肝臓から栄養を流れ受けて大きくなるため、さらに毒量が増加するそうです。

しかし石川県では、ふぐの卵巣を塩や米ぬかを用いて発酵させ、不思議と毒性を消してしまう製法をあみ出し、郷土料理として卵巣のぬか漬けを伝承させてきました。
なぜそこまでして猛毒の卵巣を食べようとしたのか、疑問に思う方も多いことでしょう。

それは、かつて日本海で活躍した商船、北前船に大きく関係があるようです。

石川県は降水量が多く、年間を通して日照時間の短い地域です。季節風の影響を受け、冬は雪が深く、夏は暑くと季節の区切りがハッキリと表れる気候をしています。
このような土地は美味しい米作りに向いており、昔から稲作が盛んでした。
また、今に残る日本唯一の揚浜塩田を誇っており、加我百万石と栄えた前田家の時代より能登の塩づくりが発展していました。
そのうえ加我山地から流れる清らかな雪解け水や湧き出る水の質は、日本の名水百選にも選ばれているほど。

このような環境の中、米ぬかを利用したぬか漬けは、厳しい環境下となる漁ができない冬の貴重な保存食作りとして生活の一部にあったようです。

江戸中期になり、買積み廻船である北前船の交易が始まると、寄港地だった石川県美川町では地方の名産品の売買で賑わいます。
長い航海に適応する保存食を船に買い取ってもらおうと特産品作りに励み、その中で生まれたのが、ふぐの卵巣のぬか漬けだったのです。

「ふぐの子」は、魚卵特有のプチプチとした心地よい食感と、漬け込んだ後の深みある味わいが魅力で、今も昔のままの味を残す伝統的な保存食品として愛される名品です。

このふぐの卵巣のぬか漬けは、未だになぜ毒性が消えるのかそのメカニズムは解明されていません。
昔の人の積極的な開拓魂と知恵や工夫により、猛毒なふぐ毒を消してしまう製造方法は、本当に魔法のようですが、今まで一度も毒による事故を起こしたことはないそうです。
幻の珍味ふぐの卵巣の糠漬けを筆頭に、石川県に伝わるゴマフグの珍味たちを紹介します。

石川県でしか作れない幻の珍味

石川県だけで製造が許可されているゴマフグの卵巣のぬか漬けは、現在石川県の金沢市にある金石、大野地区、白山市にある美川地域でのみ製造が続いています。
漬け込む期間も長く、大量生産はできないため希少価値の高い幻の珍味と呼ばれています。

石川県のぬか漬けの特徴は、木樽を使用しているところです。
天然の素材を用い、自然に生息する微生物の力を借り、この地方ならではの環境を活かして時間と手間をかけて作られています。

春の産卵時期に獲れたふぐの卵巣は、たっぷりの塩に漬け込まれ、この段階で毒の含有量を大きく減らします。
1年~1年半、じっくりと塩漬けされた卵巣は、塩を洗い流した後、ぬかや米麹、唐辛子を入れた一斗樽に2年近く漬け込まれます。

石川県の能登半島では、古くからイカや魚を原料とした調味料「魚醤」を製造しており、ぬか漬けやかす漬けにこの魚醤を使用して独自の風味を加えています。
ぬか漬けの入った樽は、湿度を一定に保つため、毎日木樽の縁から魚醤を加えたさし汁を注ぎかけます。
こうすることで、外から雑菌が入るのを防ぐと共に、さし汁のもつ酵母や微生物が漬け物を美味しく熟成させる手助けをします。

こうして2度の梅雨を越える頃、乳酸菌による自然発酵の不思議な力の賜なのか、猛毒だったふぐ毒が分解され、古人の知恵の結晶「ふぐの子」が出来上がるのです。
「ふぐの子」は長期発酵により深みのある味わいに仕上がり、ご飯のお供や酒の肴に最高の奇跡の珍味といわれています。

石川県で生まれたゴマフグの加工品たち

前述した卵巣のぬか漬けは有名ですが、他にも石川県にはゴマフグを用いた珍味が存在します。
石川県白山市(旧美川町)を中心に、ゴマフグの身を三枚に下して塩漬けし、干して旨味を凝縮させてから、米ぬかや酒粕で1年半以上漬け込んだ粕漬けです。
薄くスライスしてそのまま食べるもよし、軽く炙って酢やレモン果汁をつけてさっぱりと、大根おろしを添えて楽しむ人もいるそうです。

もう一つの隠れた珍味が、ふぐの内臓周りにある身の薄いところを使用した「薄腹(うすはら)」です。
この身をカラカラになるまで干し上げ、保存のきく干物に加工したものが「薄腹」です。
一般的な調理法は、一昼夜水で戻してやわらかくしてから細かく刻み、醤油、酒、砂糖、出汁で甘辛く煮つけます。
乾物ならではの心地よい食感と旨味、甘辛い味つけはご飯のお供にぴったりです。

ゴマフグと珍味

ぬか床を混ぜる女性

春から初夏にかけて漁獲量の増えるゴマフグは、短い旬の時期をねらって食べに訪れる人がいるほど、ふぐのフルコースを堪能できるリーズナブルなふぐとして人気があります。
ゴマフグの名前は、一般的にあまり馴染みがないかもしれませんが、雪深い地域の貴重な保存食として、干物や漬物にされ年間通して食されてきました。

ふぐの卵巣のぬか漬け、ふぐの身のぬか漬け、粕漬け、薄腹などは、ゴマフグのみずみずしい身質を理解し、水分を抜くことで旨味を濃縮させて美味しさを引き立てた逸品です。

特に石川県は、地域の環境を活かした独自の加工食品を生み出し、魚醤という伝統的な調味料を用いて、日本の健康食品「ぬか漬け」に奇跡の名品を遺しました。
なにより世界で唯一ふぐの卵巣を加工品として生産していることは、世界各国から注目され、ふぐ毒が分解されるメカニズムを研究する学者たちを唸らせています。

毒素が無くなる不思議が解明されていないふぐの卵巣のぬか漬けは、そのクオリティを維持するため、昔と寸分変わらぬ同じ製法を頑なに守って作られています。
私たちは、江戸時代と変わらぬ味を驚きとともに口にすることができているのです。

ふぐは美味しい魚です。毒があるとわかっていても、その魚を食べてみたい、そう願う気持ちもわからなくはありません。
ゴマフグは全身に毒を帯びつつも、地域に密着した食材として食用とされ続けてきたのです。

美食家達が一生に一度は、何としても味わいたい幻の珍味は、ゴマフグの卵巣でしょう。
ゴマフグの卵巣は、世界が熱い眼差しを向ける奇跡の珍味となっていることをぜひ覚えておいてください。

2017-9-12作成/2018-10-9更新]

下関ふぐ本舗

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