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知っておくと面白い「ふぐ」という魚の生態や特徴

ふぐ

他の何物をもってしても及ぶところではない、美食の王、それはふぐです。
ふぐと言えば、見た目の美しい刺身「てっさ」や冬の味覚の鍋「てっちり」が有名です。
しかし高級魚ゆえに馴染みのない人も多く、日本を代表する魚と言えるのかというと、しっくりこなくても仕方ありません。
美食家達の絶賛をあびるふぐですが、その生態を詳しく知る人は多くないのです。
ふぐは実に400以上の種類が存在し、見た目も生息地域も様々だからでしょう。
しかし諸外国から見れば、日本は毒のある魚を食べている国というイメージが強烈で、なぜ日本人はふぐを食べるのかと首を傾げられているのが現状です。
かの天才芸術家、北大路魯山人は「なんの味もないようであったが、やはり、ふしぎな魅力をもっていた」と、淡泊なふぐの味を追ってしまう心境を語っています。
古くから食されてきたふぐのおもしろさとは、味だけでなくその生態にもありそうです。
ふぐについての基礎知識と、ふぐのイメージから沸く数々の呼び名について触れてみました。
ふぐが大好きな方も、ふぐに馴染みのない方も、知るとおもしろいふぐのうんちくを語ります。

ふぐの生態

群れで泳ぐふぐ

ふぐがお腹を膨らませるユニークな姿は大変かわいらしく、まん丸に変身をして「グゥー」と鳴けば、なんとも珍しい魚と目を引く面白さがあります。
その見た目に反して猛毒をもつ魚としても有名で、世界中の人は警戒心を抱いています。

有毒部位がはっきりと判明していなかった時代、運悪くふぐの毒に当たれば命を失う事から「鉄砲(弾に当たると死ぬ)」と強烈な異名で呼ばれた、なかなか凄みのある魚です。
しかし、食べれば白身魚の王様と言っても過言ではないほどの美味しい魚でもあります。
また高価な魚のため気軽に食べられないという面も、人の気を引く一因となっているのかもしれません。

そんなふぐの種類は世界に約430種と言われています。
日本だけでなく、世界中に分布している多種多様なふぐの仲間とは?
馴染みがあるようで、実はあまり知られていないふぐの生態に迫ります。

ふぐの生息地域

ふぐは世界中の温帯から熱帯に分布しており、淡水に生息するものや海水に生息するものなど、その種類は多種多様です。
ふぐの仲間は動物界のフグ目フグ科という大きなグループに分類されており、驚くことに未だに新種も発見され増え続けています。

フグ目の殆どは沿岸性で、サンゴ焦や岩礁付近といった陸地に近い浅瀬の場所を好んで生息しています。
しかし例外もおり、河川など淡水地域に生息できる種類もいれば、外洋域や深海に生息している種類もいます。

日本では海水に生息しているふぐしか発見されておらず、北海道以南に広く分布し沿岸の岩礁などに生息しています。
日本の近海では約60種のフグ類の分布が確認されています。
これらのうち22種については、厚生労働省により無毒または適切な処理により可食できると定められ、漁業の対象として水揚げされています。

ふぐの中でも最高級であるトラフグは天然ものが非常に少なく、主に遠州灘(静岡県御前崎~愛知県伊良湖岬)、日本海西部、瀬戸内海、東シナ海等の海域で漁獲されています。

ふぐの仲間

ふぐの仲間は大きさも形も様々で、カラフルで小さな熱帯魚もいれば、四角い箱形をしたもの、触角のような棘をもつもの、マンボウのように平たく大きなもの、とそれぞれ個性的な姿をしています。
種類が多いので、分子系統学(生物の進化の道筋)で見ると、進化するにつれてその形態を単純化している変化がわかり、面白みがあります。

例えば、ふぐには腹ヒレがないことを身体的特徴としてあげられますが、ベニカワムキという大西洋に分布するふぐには腹ヒレがあり、最も原始的な特徴を残しているふぐと言われています。

ふぐの仲間の分類

フグ目の約430種のふぐ達は、さらに10の科に分けて分類されています。聞き慣れない名前が多いですが、世界に生息するふぐの仲間を紹介いたします。(五十音順)


イトマキフグ科
オーネイトカウフィッシュ、ホワイトバードボックスフィッシュなど
ウチワフグ科
ウチワフグ
カワハギ科
ウマヅラハギ、カワハギなど
ギマ科
ギマ、ロングスパイントリポッドフィッシュ
ハコフグ科
コンゴウフグ、シマミスズメ、ハコフグ、バッファロートランクフィッシュなど
ハリセンボン科
イシガキフグ、ネズミフグ、ハリセンボン、ヒトヅラハリセンボンなど
フグ科
インドエメラルドパファー、カラス、クサフグ、サバフグ、トラフグ、マフグなど
ベニカワムキ科
ベニカワムキ
マンボウ科
クサビフグ、マンボウなど
モンガラカワハギ科
クマドリ、ナメモンガラ、ピカソトリガーフィッシュ、メガネハギなど

ハリセンボンとは

ハリセンボンの体表には、ウロコが変化した350~400本程の棘があります。この棘は成長するにつれ、大きく伸びていきます。
ハリセンボンは外敵に襲われたり刺激を受けた時に、大量の水や空気を吸い込んで体を膨らませます。
すると寝ていた棘が直立し、ヤマアラシの様に相手を威嚇して身を守ることができます。
その鋭さを「針が千本」と表現したのが名前の由来になっています。

ハリセンボンは、ふぐの仲間ですが毒はありません。
沖縄ではポピュラーな魚で、皮を剥いだ身は味噌汁の具にするなどして食べられています。

「ハリセンボン」不器用さと強靱さのギャップ萌え

マンボウとは

マンボウもふぐの仲間で、およそ3m近くまで成長する大型の魚です。
水族館での飼育は、過密にならないことと、衝突によるケガを負わないよう気をつけているそうです。
マンボウの大きな体は小回りがきかないために水槽にぶつかると皮膚を傷めてしまいます。
水族館では、マンボウの体と水槽の両方を保護するために、水槽の壁にビニールやネットの幕を張っているのです。

また、皮膚には寄生虫が付きやすいため病気を未然に防ぐ管理や、消化器官が弱いので餌をすり身にして与えるなど、健康維持が難しい魚です。
自然界のマンボウは、時折海面上に浮かんで横たわる「昼寝」と呼ばれる様子が目撃されています。
これはカモメなどに寄生虫を食べてもらったり、日光浴で殺菌を行っているのでは、と言われています。

カワハギとは

夏から秋にかけてが旬のカワハギも、ふぐの仲間です。
カワハギはエサを取るのが上手で釣り上げるのが難しく、ゲーム性が強いところが釣り人に人気の魚種です。

カワハギはふぐに似た白身の魚で、歯ごたえが良く大変美味で、ふぐと違い毒がないため、肝臓を食べる事ができます。
カワハギの肝は濃厚で甘味が強く、肝を醤油に溶かし刺身に付けて食べる「ともあえ」という食べ方が大変人気です。

ふぐの特徴

生き物はそれぞれ固有の特徴を持っているものですが、ふぐのように際立つ特徴を持つ種類も珍しいでしょう。
ふぐ特有の特徴には常識を覆す不思議がたくさんあり、人を惹きつける魅力があります。

ふぐの十八番!膨張

ふぐは外敵に襲われるなどビックリした時に、ぷくっとお腹を大きく膨らませて相手を威嚇します。
その姿から英語では、ふぐの状態をあらわすglobefish(球体、球状の魚)や、blowfish(吹く、息を吹く魚)と呼ばれています。

ふぐの消化器(胃)は一部が特殊な袋状をしており、その膨張嚢(ぼうちょうのう)と呼ばれる袋状の器官に水や空気を吸い込んで体を膨らませているのです。
膨張には胃の前後にある括約筋がとても重要な役目を果たします。
空気はエラ穴から、水は口から取り入れて、この括約筋で袋の口をしっかりと締めて膨らみをキープしています。

なにも水を取り込むのは、威嚇の時だけではありません。 あまり知られていないかもしれませんが、吸い込んだ水を水底に吹き付けて泥を吹き飛ばし、ゴカイなどの餌を食べる際に使うこともあります。

昔からふぐが親しまれてきた大きな理由の一つは、この体を変化させるというユーモラスに溢れる特徴にあったと言えます。
ふぐが膨らんだ姿はなんとも愛嬌がありユニークなので、ふぐ提灯といった民芸品にもなっているのです。
しかし、ふぐの中には、全く膨らまない種類のふぐもいますし、ウチワフグの様に可動性の腰骨によって腹部を拡張させるタイプのふぐも存在しています。

いろんな形で身を守っている

ふぐの種類によっては、体表に鋭い棘があり、膨らむことによって棘を立ててイガグリのような姿に変身するものがいます。
これは外敵から身を守る防御機能と言われています。
棘はウロコが変化したもので、体表を守るために付いています。

ハリセンボンの様に体中に4~5センチにもなる長い棘をもつ種類もいれば、短い棘の種類もいます。
カワハギは、おでこに一本の長いアンテナの様な角を生やしているのが特徴ですが、それは背びれが変化した棘の一種です。

ハコフグは、棘の代わりにウロコが変化した骨板が甲羅のようになって体を包み、まるで石のように硬い体で身を守っています。
マフグは全く棘を持っておらず、体表はツルツルとなめらかですが、皮に強い毒を持っています。

ではこれらの防御機能は、どうしてふぐに必要だったのでしょうか。
それは、ふぐの体(ヒレ)の使い方に理由があります。
ふぐは普通の魚のように、尾ヒレを使い体をくねらせるようにスイスイと泳ぐ動作ができず、小さな背ビレとシリビレを使ってパタパタと泳ぎます。
その泳ぎ方は、他の魚と比べると上手な泳ぎとは言い難く、外敵と対峙した際、素早く逃げることができないのです。
そのため、緊急時には膨張して棘を出したり、毒を出して威嚇し身を守っているのです。

サンゴもかじる丈夫な歯

ふぐの歯は通常の魚の歯とは異なっており、ふぐ分類上大きなポイントとなっています。
ふぐの学名テトラオドンティダエ(Tetraodontidae)はラテン語で、大きな歯が四本ある、という意味があります。
小さな歯がたくさん生えているのではなく、板状になっている大きな歯が上下2枚ずつ合計4枚の歯板となっていて、中央部分がクチバシの様に鋭く尖って生えています。

上下共に前顎骨(ぜんがくこつ)に癒合しているのでとても強力で、細い針金くらいなら簡単に切ってしまうほど強い歯と顎をしています。
ふぐが釣り糸を切ることは釣り好きの間では周知されており、釣り上げた時に万が一でも指を噛まれて大怪我をすることがないよう、注意が必要です。

ふぐの養殖施設では、仲間同士の噛みあいによる傷を防ぐために歯板の一部を切る、「歯切り」という作業が行われています。

この様な強靭な歯をもつ特徴は、熱帯のサンゴ礁付近にいる魚に共通して見られるもので、サンゴ等の固いものを噛む習性から発達したと言われています。
ふぐはこの頑丈な歯板を使い、海底のエビ、カニ、巻き貝、ゴカイ、ヒトデ、サンゴ片、海綿等の硬い餌を食べることができています。

ふぐの毒

一般に「ふぐ毒」と言えば、神経毒の「テトロドトキシン」を指します。
フグ目の学名(Tetraodontidae)と毒(toxin)の合成語で名付けられました。
テトロドトキシンは、青酸カリの約1000倍の毒性をもちます。

毒のある部位はふぐの種類によって異なり、毒を持たないふぐも存在します。
例えばトラフグの皮は無毒部位なので食べられますが、マフグの皮には毒があり食べられません。
ふぐの毒は強烈で、中毒を起こすと最悪命を落とす場合があります。

ふぐ毒による中毒症状は、唇から舌の先、指先にしびれを感じ、麻痺を起こすのが特徴です。
軽い症状の時には嘔吐や頭痛がおこり、初期の段階で気づくこともあります。
重症の場合は、神経が麻痺し呼吸ができなくなり、死に至ってしまうのです。
これらの症状は、食後間もなくから5時間以内、平均して2時間前後で発生します。

ふぐ毒には他に、ハコフグ科のふぐが皮膚から分泌する「パフトキシン」という種類もあります。
ふぐ毒は肝や血液だけに注意すればよいものではありません。似た容姿のふぐでも有毒部位は異なるのですから、絶対に素人が調理してはいけない魚なのです。

ふぐは無毒だった!?

ふぐは生まれながらに毒を持つ魚ではありません。

餌となる微生物の中に毒の要素を含む海洋細菌があり、餌を食べていくうちに毒が体内に蓄積していきます。
食物連鎖の中での体内濃縮により、極めて強い毒が作られるのです。
そのため、漁獲の場所や季節により毒の含有量にも個体差があらわれます。

以前は有毒部位のふぐ肝も食べられていたようですが、食中毒による事故が多発していました。
1983年になって、食用できるふぐを22種に選定し、それぞれの有毒部位を明確にした上で、人体に影響の少ない可食部位が定まりました。
これにより、有毒部位のふぐ肝は、食用として提供することが禁じられたのです。

しかしふぐの肝臓は幻の珍味といわれ、本当は食べたいと思っている美食家達が大勢いるようです。
その願いからか、ふぐを何とか無毒化して肝も食べられるようにする試みが九州地方で始まりました。
そしてついに、外海から完全に隔離された養殖施設において稚魚から無毒のエサを与え続けて育てたふぐは、無毒の魚になるという画期的な飼育法が確立されました。

2004年に佐賀県は、無毒の養殖ふぐを使用した肝臓料理を提供できるように「ふぐ肝特区」の申請を厚生労働省に提出しましたが、残念ながら認められませんでした。
2015年にも第三者機関の評価委員会による解禁妥当の評価を受け、再度ふぐ肝料理解禁の許可を国に働きかけています。

有名なことわざ「河豚は食いたし命は惜しし」の一文から分かるように、ふぐの肝は美味で魅力のある食材なのですが、食中毒になると命に関わるため、万が一のことを考えて100%安全であるという認可がおりず苦戦しているようです。

完全無毒化されたふぐに興味はありますが、それでもふぐ肝を食すには、生産者と消費者の信頼関係が求められることでしょう。

ふぐ毒は必要なもの

ふぐは美味しい魚なのですが、素人はうかつに手が出せない毒を潜んでいるからやっかいです。
ふぐは種類ごとに有毒部位が異なりますが、ほとんどのふぐは内臓に毒が集中しており、卵巣と肝臓の毒性が最も強いと言われています。

ですが、ふぐにとって毒は必要不可欠なもの、という研究結果が発表されています。
ふぐは体内の毒を上手に利用して生活しています。
例えば産卵を控えた時期になると、肝臓に蓄えた栄養を使ってメスの卵巣は大きくなるので、テトロドトキシンの量が増えていきます。
それは同時に、大事な卵を抱えた自身を外敵から守ることにも繋がっています。

そして産卵の時には、放出されるテトロドトキシンにオスのふぐが引き寄せられ、放精が始まります。
これは、テトロドトキシンがフェロモンの役割を担っていると想定できます。
そしてこのふぐ毒は、卵を餌に近寄ってくる他の魚達から子供を守る防御機能ともなるのです。

また、養殖場で無毒のふぐを育てることは可能になりましたが、無毒のふぐはストレスにより仲間同士の噛み合いが頻繁に起きています。
無毒のふぐと有毒のふぐを同じ水槽に入れると、無毒のふぐが有毒のふぐに噛みつくなど、毒を取り込もうとする行動が判明しています。
ふぐの行動パターンを研究した結果、体に毒をもつ方が、精神的に安定するのではないかと考えられています。

変わった試みですが、養殖ふぐの免疫力を高めるため、わざとふぐ毒を与える飼育試験もされました。
結果、魚病に対する耐病性が強くなり、健康で美味しいふぐが育つことがわかりました。

人命に害を及ぼすテトロドトキシンですが、ふぐにとって毒は必要な成分であり、精神安定剤に似た効果も発揮するようです。

特効薬のないふぐ毒の恐さ

ふぐ毒に関しては謎が多く、数多くの研究がされてきました。
しかし現在においてもテトロドトキシンに効く解毒剤はありません。

毒性は300℃の熱を加えても分解されないため、加熱調理によって取り除くことはできません。
そのため、ふぐ毒を摂取してしまうと必ず中毒になります。

症状は摂取したふぐ毒の量と個人の免疫力により差がありますが、早い時は食後30分から症状が現れ、通常は1時間~6時間中に発症して、最悪命を落としてしまいます。

テトロドトキシンは神経毒のため、指先にしびれを感じたり、舌がもつれてうまく話せなくなったりします。
これは傍目にお酒に酔った症状と似ており、間違われて放置されてしまう可能性もあります。
そのうち全身が痺れる運動麻痺がおこり、意識が明瞭のまま呼吸困難になりやがて死亡します。

危険を感じたら一刻も早く医療機関へ連絡し、直ぐに胃の中が空になるまで食べ物を吐き出すことです。次に、人口呼吸などで呼吸を確保するなど、応急処置を施すことで生存率があがります。

あってはならない事故ですが、万が一の時には早急に、治療設備の整った病院できちんと受診する必要があります。
何にせよ、食中毒になる危険を犯さないことが、第一です。

テトロドトキシンという不思議なふぐ毒、その謎に迫る

ふぐ毒中毒事件

正しい毒処理の知識と技術が確立する前は、ふぐ毒による中毒死はわりと身近なものでした。 しかし未だに、平成28年までの10年間に報告されているふぐ中毒は、240件にもおよびます。 おもに一般人の調理による中毒事故ですが、お店で提供された肝を食べておきた事故もあります。

日本では、ふぐ肝をお店で提供することは条例で禁止されています。 美味しいふぐを食べる側も、正しい知識をもって、安全に食事を楽しみたいものです。 以下にフグ毒で中毒しした有名人を記載します。 いずれも、周囲の反対を押し切って食べた事による悲しい事故です。

福柳伊三郎(1893~1926力士 享年33歳)
大正時代の人気力士(関脇)。
巡業地の福岡にて、差し入れで届いた大好物のふぐを食べ、中毒を起こし他界。
沖ツ海福男(1910~1933力士 享年23歳)
優勝経験のある力士(関脇)。
婚約と部屋継承の祝杯の場で、自分でふぐを調理し、ふぐ毒に当たり他界。
八代目坂東三津五郎(1906~1975歌舞伎役者 享年68歳
トラフグの肝蔵を4人前食べて中毒を起こし他界。
調理人が務上過失致死罪の有罪判決を受けることになった大きな事件。

ふぐの種類

ふぐのイラスト

世界には約430種のふぐの仲間がおり、日本近海には約60種類が生息しています。
その内、我が国で食用として漁獲されているふぐは、22種に限定されています。
全体を見れば食べられる種類は少ないかもしれませんが、国内で22種ものふぐが食べられていることに驚かれる人もいらっしゃるでしょう。
日本の市場で取り扱われているふぐをピックアップして、その特徴を取りまとめました。

日本で漁獲される代表的なふぐ

ふぐといえば最高級のトラフグが有名ですが、流通しているトラフグの9割は養殖です。
天然のトラフグは非常に少なく、天然ふぐとして漁獲されるのは他の21種が占めています。
すべて海水魚ですが種類ごとに味わいや可食部位が異なるため、その評価価格も様々です。


また同じ種類のふぐでも、生息環境が違うと毒のある部位が変わり、食用が禁止されることもあるので素人は調理が禁止されているのです。

日本で漁獲される特徴的なふぐを9種類ほど紹介します。

トラフグ

ふぐの中でも全長80cmにもなる大型のふぐで、最も高級なふぐです。
胸ビレの後ろに白く縁取られた黒い斑点と、それに続く小さい黒斑点が続いているのが特徴です。
尻ビレは白もしくは少し赤みがかっていて、類似のふぐと見分けるポイントとなります。

身の部分、皮、精巣(白子)は食用でき、料理のレパートリーも豊富です。
刺身、ちり鍋としていただくことが最も多く、稀少な白子は高級珍味として大変人気があります。

トラフグの刺身は、弾力のある身を程よく熟成させて薄く切り、溢れるほどの旨味を閉じ込めた究極の逸品です。
ふぐ料理といえば、真っ先にトラフグの刺身をイメージする人が多く、トラフグはふぐを代表する横綱的存在の魚です。

ふぐの王様と称されるトラフグの魅力

カラスフグ

外見は、トラフグによく似たふぐです。
全長50cm程の大きさがあり、トラフグの次いで美味で高級と言われています。

選別のポイントは、胸ビレの後ろの大きい黒斑に続く小さな斑点がない(目立たない)事と、尻ビレが黒もしくは暗色なので見分けることができます。
トラフグ同様に身の部分、皮、精巣(白子)が食用できるため、トラフグの代用品として用いられることも多くありました。

しかし需要の上がったカラスフグは過剰に漁獲され、2008年までの40年間で、個体数減少率が99.99%と最悪の危機状態であることを指摘されました。
2014年11月に、カラスフグはIUCN(国際自然保護連合)により絶滅危険種リストに指定されました。

カラスフグ、日本の需要に追いつけず絶滅寸前

マフグ

マフグの外見は、暗褐色の背に小さな斑点がたくさんあり、尻ビレは薄い黄色をしています。
体に棘はなく、なめらかな皮をしていることから「ナメラフグ」と呼ばれています。

カラスフグと同じく全長50cm程の大きさがあります。
漁獲量も多く、価格はトラフグの半分程度と言われているので食べる機会は多いかもしれません。
身の部分と精巣(白子)は食べることができますが、皮は強い毒性があるので食べることができません。

マフグは「フグの女王」と称される美味しい身が自慢です。刺身やふぐちり鍋などにされることが多く、庶民的なふぐと言えます。

マフグはふぐの女王と称され漁獲量も多い魚

シマフグ

シマフグは名前の通り、背の黒地に白い縞が入っています。
また全てのヒレが鮮やかでかわいい黄色をしています。

トラフグ同様、身の部分・皮・精巣(白子)を食べる事が可能です。
全長60cm程と、ふぐの中でも比較的大きな種類になります。
シマフグは可食部分となる身が多く、鍋や唐揚げに使用されます。

サバフグ系(シロサバ・クロサバ・カナフグ)

体長30㎝程の中型のふぐで、ふぐの中では安価な部類に入ります。
サバのように群れになって生息し、光沢のある体表が特徴です。

旨味も少なく安価なため加工品にされることが多く、一夜干しや、骨付きのまま唐揚げにされています。
生では水分が多いため、熱を加えることで水分を落とし旨味を高める調理法が望ましいふぐです。

シロサバフグは無毒?類似の死神にご用心

ショウサイフグ

背面が褐色で濃い褐色の小さな斑紋が付いており、体表に棘はなく、尻ビレが白いのが特徴です。
全長35cm程の体格で、ふぐの中では中ぐらい程度の大きさです。

毒性がかなり強く、皮も毒性が強いので食べることはできません。
身の部分・精巣(白子)は可食部位に指定されていますが、身には弱い毒性があります。
食用にしても無害とされていますが、大量に摂取するのは注意が必要です。

ショウサイフグは毒性が強いことから、「ナゴヤふぐ」とも言われます。
そのいわれは、「名古屋城」で有名な愛知県西部地域が、かつて「尾張国」と呼ばれていたことに由来します。
尾張国の南隣には「美濃国」があり、源頼朝が「褒美に美濃尾張をさしあげよう」と言ったけれどそれは「美濃尾張(身の終わり)」を意味していた、という昔話と繋がっているそうです。

ショウサイフグ・コモンフグ・ヒガンフグ・クサフグ・ナシフグは毒性が強く、外見も似ているため、まとめて「ナゴヤフグ」と呼ばれています。

身近なショウサイフグだが毒の部位には注意して!

コモンフグ

体長25cm程の小ぶりなふぐで、背面は緑がかった褐色をしており、白い円形の斑紋が付いているのが特徴です。
ナシフグ、ショウサイフグと似ており、コモンフグは尻ビレが淡い黄色をしている部分で見分けることができます。

コモンフグは身の部分に弱い毒性がありますが、食べる事ができます。
その身は水分が少なく、歯ごたえを楽しめる刺身向きの肉質と言われています。
しかし、皮と精巣(白子)は強い毒があるので食べる事ができません。
また、岩手県・宮城県で漁獲されたコモンフグは毒性が強いため、厚生労働省で食用を禁止しています。

ヒガンフグ

背中側は暗褐色をしていて、黒の小さな斑点がまばらに付いています。
ヒレは赤味を帯びた黄色をしており、ショウサイフグと見分ける事ができます。

食べられるのは弱毒の身の部分だけですが、大変美味しく、価格も安くありません。
皮・精巣(白子)は有毒部位のため、食べる事ができません。

そしてコモンフグと同様に、岩手県・宮城県で漁獲されたものは毒性が強いため、厚生労働省で食用を禁止しています。

ナシフグ

体長25㎝程の小ぶりなふぐで、胸ビレの近くに白く縁取られた斑が花のように見えるのが特徴です。
ナシフグは地域により毒性が異なるふぐで、基本的には食用禁止という認識です。

有明海・橘湾と、香川県・岡山県の瀬戸内海で漁獲されたものに限り、身の部分だけは食べる事を許されている、珍しいふぐです。
精巣(白子)に関しては、有毒部位ではありますが、有明海・橘湾で漁獲されたもので長崎県が定めている要領によって処理されたものだけは食用が許されています。

ふぐにまつわる様々な呼び名

ふぐと箸を持つ福の神

日本はふぐに関する歴史が深く、ずっと愛されてきたゆえに様々な呼び名を持っています。
一般的には「ふぐ」と呼ばれていますが、ふぐの産地として有名な西日本、特に九州や山口県では「ふく」と呼ばれています。
「ふぐ」と濁らないこの呼び名は、どの様な経緯で定着したのか気になるところです。

他にも、世界中に生息しているユニークなふぐは、各国でどのような名前を付けられているのでしょうか。
ふぐらしさを表した、ふぐにまつわる様々な名称を紹介します。

「ふぐ」と「ふく」

平安時代(794年~1185年)に書かれた、日本最古の本草書(薬用となる植物などをまとめた本)にふぐの記録が残されています。
その書物「本草和名」(918年)の本文には、唐の薬物の漢名を和名に当てはめ、国産の有無や産地などが記されています。
ふぐが登場する最初の書物としても知られています。

ふぐは「布久(ふく)」という名で初登場し、ほぼ同時代の「倭名類聚鈔」(日本最古の分類体の漢和辞典)には「布久(ふく)」及び「布久閉(ふくへ)」と紹介されています。

この呼び方の由来は、ふぐが体を風船の様にふくらませる(=ふくるる)を略したもの、もしくは水上に浮かび上がる姿がひょうたん(=ふくべ)に似ているから、などと言われています。
西日本地域は、この呼び方を継承し「ふく」と呼ぶようになったという説が一つ。

もう一つは、「ふく=福」と縁起を担いで呼ばれるようになったというものです。
江戸時代(1603年~1867年)すでに下関市では、「ふく」は「福」に通じるとして祝儀の贈り物に用いられていました。
そして「ふぐ」と濁るのは「不具」や「不遇」に通じるとして避けられたと言われています。

ふぐらしい様々な異名

それでは、ふぐにまつわる様々な異名をいくつか紹介しましょう。
ふぐは外敵に襲われると風船の様にふくらむその様や、強い毒を持つ特徴が個性となり様々な呼び方が生まれました。

中国伝来「河豚」

ふぐは漢字では「河豚」と書きます。
これは中国から伝わってきました。
中国では大河の一つ揚子江(長江)に生息するメフグを、古来より美味しい川魚として食してきました。
メフグの姿が丸々太っていて、豚に似ている為「河豚」と呼ばれるようになったという説が一つ。
他にも、ふぐが中国料理で美味として愛されている豚肉にも匹敵する味わいという事から河豚になったという説や、ふぐの鳴き声がブーブーと聞こえて豚の鳴き声と似ているから河豚となったという説も残されています。

日本国内様々な異名

ふぐの異名は、主にふぐの主産地である西日本地域で生まれました。
その中でも、とくに有名なのが「鉄砲」です。

鉄砲という異名は江戸時代(1603年~1867年)には全国で使われ、とくに江戸ではかなり多用されていました。
この呼び名は、鉄砲もふぐも当たれば命を落とす危険があるという洒落から生まれました。
現在では、この洒落を好む浪花気質の大阪で定着している異名です。

また、他にも「キタマクラ」という通称もあります。北枕と聞けば、亡くなった人を連想してしまいます。
こちらも、ふぐらしい死と隣り合わせの異名ですね。

しかし実は、昔お釈迦様が沙羅双樹の下で入滅した際、頭を北に顔を西に向け右脇を下に向けていた姿をいうそうです。
お釈迦様にならって、人が天国へ旅立つと頭北面西右脇臥の姿勢にする風習が生まれたそうですよ。

ふぐらしいと言えば、長崎県島原地方では「ガンバ」と名付けられています。
この地方では棺桶の事を「ガンオケ」と言い、棺桶を用意する覚悟でふぐを食べるという意味で「ガンバ」と呼ばれる様になり、現在でも頻繁に使われています。

更にふぐ毒の強さを表す異名は、鹿児島県志布志地方の「ジュッテントン」です。
十回も転んで倒れる程の毒がふぐにはある、という「十転倒」の語尾がなまってそう呼ばれるようになりました。
この異名は、現在ご年配の方を中心に使われているそうです。

流通業界の暗号

ふぐ流通業界では、ふぐの事を「丸(マル)」と呼ぶ事があります。
「丸」という呼び方は、明治初期のふぐ食禁止の頃に裏ルートでふぐを売っていた際使われていた暗号です。

「丸」はふぐがふくらんで丸々としている姿からついた呼び方で、今でも九州や山口県などで使われています。
ちなみにふぐ禁食時代の大阪では、鉄砲の「テツ」がふぐの暗号として使われていたようです。

外国での様々な呼び方

ふぐの世界共通の学名は、テトラオドン(Totraodon)で四つの歯という意味があります。
世界ではふぐを何と呼んでいるのか、下記に羅列してみました。


英語
プファー(Puffer)、ブローフィッシュ(Blowfish)、スウェールフィッシュ(Swellfish)、トードフィッシュ(Toadfish)、グローブフィッシュ(Globefish)
フランス語
ポアソングローブ(Poisson-globe)、ポアソンアーミー(Poisson-arme)
ドイツ語
アウフブリーザー(Aufbleaser)、クーゲルフィッシュ(Kugelfish)
マレー語
ブルタル(Burtal)
朝鮮語
ボゴ(Bogeo)
フィリピン語
ボティティ(Botete)

いずれもふぐの特性や姿、空気や水を吹く性、ふくらんだ様子、太った魚などという意味をもちます。
ユニークなのはロシア語で、歯をむき出して笑うという意味のスカルズープ、ひょうきん者・冷笑者という意味のズゥバスカールと呼ばれているようです。
世界共通語のエスペラント語では、ふぐはバロンフィイショと呼びます。
これだけ知っていれば、世界中どこのふぐにも会いに行けますね。

「ふぐ」という魚とは

ふぐ鍋いろり

数多い魚の中でも、ふぐは目立っておもしろく不思議な特徴をもつ魚です。
日本全国で生まれたふぐに関する様々な異名は、日本人が古来よりふぐ毒に翻弄されながらも、その美味しさに魅了されてきた証と言えます。

ふぐの仲間とひとくくりにするにはあまりにも多様性がありますが、うろこの存在が薄く、浮き袋が発達しているなどの共通点があります。
そして、4枚の歯を持つことが学名となっていることから、歯は最大の特徴といえるでしょう。

泳ぎが苦手なふぐは、自らを守るため強力な武器を手に入れました。
風船の様に丸々と膨らんで変形してみせたり、水鉄砲の様に口から水を吹き出すこともできます。
陸に上がると空気を使って「ぐぅ」と鳴き、危険信号を発信します。
くちばしのように大きく丈夫な歯は、サンゴや硬い貝を鋭く噛み砕くほど強力です。
そして、体に強烈な毒を備え、他の生き物の命を奪う怖さを持ちます。

歴代の研究者達は、世界中に生息している何百種類というふぐを分析し、ふぐの不思議を解明すべく尽力してきました。
そして事故なく安全にふぐを食せるように、22種類のふぐを選定したのです。

明らかに危険信号を発しているふぐを、我々はなぜ食べ続けるのでしょうか。
魅惑的なふぐの美味しさは、食べた人にしか語れないと言います。
ふぐの旨味については、別の記事で紹介しています。

大切な食糧として、毒や生態とも向き合い共存してきたふぐは、日本を代表する魚で間違いありません。
ふぐが大好きな方も、今まで縁がなかった方も、ふぐという魚の魅力を知った上で、その美食なる味わいを堪能してみたくなったでしょうか。
この先は、あなたが実際に口にしたふぐの世界をじっくり繰り広げてみてはいかがでしょう。

2017-9-12作成/2018-10-9更新]

下関ふぐ本舗

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