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ふぐのヒレ酒が温めた戦後の酒場、神の技法とは

ヒレ酒

日本の伝統的なお酒、日本酒。
今でこそ日本酒は、吟醸酒や純米酒など自分好みの酒を選んで購入できますが、戦時中の物資が乏しい時代に、酒は大変貴重なものでした。
苦しい貧困の時代でも、お酒を飲む時間は唯一の息抜きであり、楽しいひとときは人々の心を潤してくれ、お酒は欠かすことのできない存在でした。
そのころ流通していた粗悪な酒をいかに美味しく楽しむか、ちまたに広がった「ヒレ酒」についてお話します。
ヒレ酒とは乾燥させた魚のヒレを香ばしく炙り、温めた日本酒に入れてヒレから抽出される旨味を楽しむ飲み物です。普段の酒が、何倍にも美味しく上質になるとして人気を得ています。
魚のヒレは一見捨ててしまいそうな部位ですが、その価値を見いだし、日本酒と組み合わせた先人のアイディアは天晴れの一言です。
和の味わい、ヒレ酒が生まれた時代背景を追ってみました。
日本酒好きの方にも日本酒に馴染みのない方にもぜひ読んで欲しい、日本酒がさらに美味しく進化するヒレ酒の秘密に迫ります。

日本酒の進化、その歴史

日本酒瓶

日本では古来より、神事などの行事に欠かせない神聖な飲み物として酒を扱ってきました。
水稲農耕が渡来し稲作の盛んになった弥生時代(紀元前300年頃~紀元後300年頃)に、米を主体として酒が造られるようになったと言われています。
そして西日本の九州から近畿地方での酒造りが、米を主体とした酒造りの起源だと考えられています。

米を主食としてきた日本人にとって、米は身近でありながらも貴重な食料でした。
戦時中は米が不足したため、日本酒も混ぜ物をして水増しするなど、粗悪なものが出回り美味しさを追求できない時代もありました。

そんな中で誕生したのは、粗悪な日本酒に魚のヒレを入れる飲み方でした。
ここでは日本酒の歴史を追い、ヒレ酒誕生の秘密に迫ります。

日本酒の歴史を知る

米の酒は稲作と共に大陸よりもたらされました。
弥生時代における酒の作り方は、加熱した穀物を巫女が口でよく噛み、唾液の酵素であるジアスターゼで糖化させた野生酵母の力で発酵させるという、最も原始的な方法を用いていました。

奈良時代(710年~794年)初期、朝廷に向けて酒の醸造体制が整えられ、酒造りが一歩進化した時代を迎えます。
米麹による酒造りに関する伝承が「古事記」に記されています。

平安時代(794年~1192年)に入ると、「米」「麹」「水」で酒を仕込み始めます。
当時はまだ酵母の働きが解明されておらず、見えない力の作用で発酵し出来上がる酒は、神様が創り上げている神聖な飲み物として大切にされていました。
この時代の政治は祭事の要素が強く、ハレの日には欠かせない飲み物として、酒は上流階級の特別な飲み物として扱われていました。

鎌倉時代(1192年~1573年)になると貨幣経済が発達し、商業が盛んになるにつれて酒は一般的に売られ、庶民でも手に入るようになりました。
この頃に、麹米などに精白した白米を使用する「諸白つくり」、酵母をあらかじめ培養する「酒母(しゅぼ)」、何度にも分けて仕込む「とう法」など、現在の清酒造りの原型がほぼ整ってきます。

江戸時代(1603年~1867年)に入ると、保存性を高めるための火入れ法(低温殺菌法)やアルコール添加をして歩留まりをよくし、香りや風味を調整する混和法が日本独自の製法として誕生しました。
日本酒は順調に発展していき、庶民にとって身近な飲み物となり食文化として定着していきます。

しかし第二次世界大戦、そして敗戦と物資が乏しい時代になり事態が急変していきます。
国民の主食である米を原料としている日本酒は、原材料不足で生産量を減らさざるを得なくなっていきました。
しかし人々の飲酒に対する欲求は強く、劣悪な密造酒が出回るようになりました。
毒性の強い酒を飲み健康被害が出るようになります。

そのような中、救世主的存在の新しい日本酒が生まれます。
それが三増酒です。

米不足により生まれた三増酒

昭和24年に酒税法改正で製造開始された新しい日本酒、正式名「三倍増醸清酒」が誕生します。
物資が乏しくても日本酒の供給量を増やすために考えられた新しい製造法です。

昭和18年、戦争で食料米の確保が厳しくなり、国は日本酒へのアルコール添加を認め、日本酒を食用アルコールで水増しする対策を取りました。
しかし食用アルコールだけを添加した日本酒は辛くてとても飲みづらかったため、さらに糖類やグルタミン酸ナトリウムを加えて、甘味と人工的な旨味を調整し飲みやすく仕上げたものが三増酒でした。

三増酒はその名の通り、米だけで造った日本酒に対してアルコールと糖類や添加物を加えることにより、3倍量の日本酒が造れることからこの名前が付きました。
三増酒が発売されるまでは、日本酒の絶対量が少なく、それを補うための密造酒がもてはやされました。

密造酒とは、無許可で造られた酒で、そのほとんどが工業用アルコールや燃料用アルコールを使用しており、人体に甚大な悪影響を及ぼしていました。
三増酒は二日酔いが酷い、悪酔いする、甘ったるい等のデメリットはありましたが、密造酒と比べれば人体への悪影響は少なく安心して飲める日本酒でした。

三増酒は、昭和50年半ば頃まで庶民の味方として広く飲まれていましたが、徐々に生産量が減少し、2006年の酒税法改正でその姿を消しました。

三増酒を美味しくしたヒレ酒

日本酒をアルコールと添加物で薄めた三増酒の味は、お世辞でも美味しいと言えるものではありませんでした。
その三増酒を、美味しくする神の技法として注目されたのがヒレ酒です。

ヒレ酒は漁師たちによって偶然ひらめいたと言われています。
海風が身体に厳しい寒い日に、漁師は冷えた体を温めるため熱燗を飲んでいました。
温めた酒をかき混ぜる際に食べ残した焼き魚のヒレでかき回したところ、ほんのりと酒が色付き、驚くほど旨い酒になったというエピソードがあります。

推測するに、熱い酒に魚の旨味がうつり、ヒレの香ばしさが加わってよい出汁となったのでしょう。
その味わいが話題となり、安い三増酒を美味しく飲む方法としてヒレ酒は広まっていきました。

現在は地酒ブームなどを経て、こだわりの美味しい日本酒がもてはやされ、逆に品質の悪い日本酒を見る機会のほうが少なくなりました。
しかし三増酒がなくなった現在でも、ヒレ酒は日本酒の良し悪しに関わらず、風味と味わいを格段にアップさせる飲み方としてその地位を確立させているのです。

ヒレ酒、その美味しさの秘密

ヒレを炙る

ヒレと日本酒を組み合わせると、日本酒の味わいに深みが増すのはなぜでしょうか。
それは炙ったヒレの芳醇な香りと、ヒレに含まれる旨味成分が、さらりとした日本酒に溶け出し、お酒の美味しさを何倍にも引き立てているのです。

しかし魚のヒレなら何でもよいかというと、そうではありません。
奥深いヒレ酒を楽しみたい方に必見の、ヒレ酒のうんちくをお伝えします。

ヒレ酒の美味しい楽しみ方

ここでは美味しいヒレ酒の作り方を説明します。
ヒレ酒を楽しむ酒器は、蓋付きの物がお勧めです。
それは、少し蒸らしの時間を作るためです。
だからと言ってわざわざ酒器を用意することはありません。
湯飲みをアルミホイルなどで覆って蓋の代わりにすれば、同様に美味しく作ることができます。

先ず、コンロやオーブントースター等を使用して、ヒレを焦がさないように弱火でじっくりと炙ります。
目安は、表面にプツプツと気泡が出てきてキツネ色になればOKです。

酒器はあらかじめ熱湯を注いで温めておき、熱燗を注ぐ前にお湯を捨てるとよいでしょう。
空の酒器に炙ったヒレを入れ、そこへ80度以上の沸騰直前までアツアツに燗をした日本酒を注ぎ、蓋をして蒸らします。

ここで気を付けたいのが、熱燗の温度です。
通常の熱燗は50度前後ですが、ヒレ酒はさらに熱くすることによって魚の生臭さが抜けヒレの旨味成分が出やすくなります。

蓋を取り、酒がほんのり琥珀色になったら完成です。
お店によっては、蓋を取って直ぐにヒレ酒の表面へ火を点けて余分なアルコールを飛ばし、アルコールのツンとした香りと魚の生臭さをさらに飛ばしてマイルドに仕上げる所もあります。
酒が強くない方は、こうすることによって味わいがマイルドになるのでお勧めです。

ヒレからでるイノシン酸という旨味成分と、じっくり炙った香ばしさが日本酒に加わり、芳醇で風味豊かなヒレ酒ができあがります。
ヒレを炙ることにより生臭さが減り、魚の旨味溢れる出汁が日本酒をさらに美味しく進化させるのがヒレ酒です。

ヒレを入れたままにしておくと、雑味が出てくるので飲む前にヒレを取り出してもいいです。
しかし時間と共に味わいが変わる変化を楽しむため、ヒレを入れたまま熱燗を飲む方もいらっしゃいます。
熱燗は、ぐいぐいっと飲み干すお酒ではないので、ちびちびと、ゆっくり味わい飲むのがよいでしょう。

ヒレ酒に合わせる日本酒は魚の旨味や風味を感じられるよう、あまりクセのないあっさりとしたものが向いているでしょう。

ふぐのヒレ酒はなぜ美味しいのか

ふぐは皮に毒をもつ種類もあるため、ふぐ専門の調理師免許を持った人しかさばけず、丸のままのふぐは消費者へ販売できない決まりになっています。

トラフグのヒレに毒はありません。
ヒレは食用できるのでヒレ酒用のヒレとして流通しています。
しかしトラフグ自体数が少なく高級な魚なので、ヒレも同様に高級食材として扱われています。

魚のヒレなどのアラの部分はイノシン酸が多く含まれています。
高タンパクでアミノ酸の含有量が多いふぐのヒレはグルタミン酸とイノシン酸ふたつの旨味成分が合わさり、とくに強い旨味を感じるのです。

さらにふぐは、低脂肪の魚で雑味や臭みのないクリアな旨味を持っています。
そのヒレを用いたヒレ酒は見た目に美しい琥珀色をし、味わい深い旨味を伴いとても美味しく仕上がるのです。

ヒレ酒の色々

ヒレ酒に使用する魚は、どの様な魚でもよい訳ではありません。
主に脂分が少なく、味が淡白な白身魚のヒレが向いているようです。

北海道の東の地域では鮭漁が盛んであり、鮭のヒレ酒なる商品が売られています。
フカヒレで有名な気仙沼では、フカヒレ酒というものもあります。
しかし実際は、フカヒレは高級食材として料理に利用されることが多いようです。
またカツオ、ヒラメ、メバル、カサゴなどのヒレ酒も美味しいと評判です。

しかしヒレ酒の王様は、やはり高級魚トラフグのヒレではないでしょうか。
トラフグは他の魚に以上に旨味成分を強く含む魚なのです。
トラフグがもつ上品で味わい深い風味が日本酒に溶け出すと、いつものお酒が至福の一杯に仕上がります。

とくにふぐの産地下関では、ふぐのヒレ酒の商品開発が進み、ヒレ酒用に開発された日本酒もあるくらいです。
それはヒレ酒がひとつの商品として確立されている証と言えます。

ヒレ酒用のヒレの作り方

美味しいヒレ酒を楽しむために、ヒレの加工はいかに魚臭さを消すかがポイントとなってきます。
そのため先ずヒレの表面に付いたぬめりを、塩で丁寧にもみ洗いします。
製造元にもよりますが、一晩冷蔵庫で寝かせた後、4~5日ほど天日で干して乾燥させ、ヒレの旨味を凝縮させます。
この仕込み次第で、生臭さがなく、ふぐの旨味を最大限に引き出したヒレができあがるのです。

旨味溢れるヒレと日本酒の相乗効果

蓋付湯飲みでヒレ酒

魚のもつ旨味は、身や骨だけでなくヒレにもぎゅっと凝縮されていることがヒレ酒を飲むとよく分かります。

ヒレ酒は炙ったヒレを熱燗に入れて蒸らして飲むと、一見単純な飲み方に思えます。
しかしヒレをヒレ酒用に加工する際、生臭さの原因となるぬめりを丁寧に洗い、余分な水分を飛ばし旨味を凝縮させる天日干しを行うなど、手間暇がかかっています。

さらに日本酒を沸騰直前までの高温に温め、焦げないよう丁寧にじっくりと炙ったヒレを入れれば、ヒレがもつ美味しさが引き出された最高のヒレ酒ができあがります。
そしてそのヒレ酒を白身魚の王様トラフグで作れば、琥珀色に輝く究極の日本酒を味わうことができるのです。

元々ヒレ酒は、粗野な日本酒をどうにかして美味しく飲みたい、と求められて流行しました。
しかし歴史は移り変わり、安定して美味しい日本酒が手に入る時代になってもなお、ヒレ酒という飲み物は途絶えることなく愛されています。

進化してきた日本酒は、人々の暮らしを豊かにしてきた魔法の水と言っても過言ではありません。
日本酒の冴えた飲み口と、海の幸の芳醇なコクが出会った時、その美味しさは相乗効果で何倍にも広がるのです。

お酒が強くない方は香ばしく焼き上げたヒレに熱燗を注いだ後、火を点けてアルコールを飛ばしてみてください。
上品で澄んだ旨味の、美味しいスープが堪能できます。
ヒレ酒に隠された力強い美味しさは、あなたへ至福の一杯をもたらしてくれることでしょう。

2017-9-14作成/2018-10-9更新]

下関ふぐ本舗

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