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車海老

車海老は、海老の中でも甘味と旨味が濃く、味わい深い種類として人気があります。家庭料理としてだけでなく、一流料亭などプロの料理人もご用達の、高級な食材です。
極上ギフトとして、お中元お歳暮などで取り上げられる「活き車海老」の贈答品は、根強い人気があります。
鮮度のよい車海老は、活きたままおがくずに包んで輸送されます。この運搬方法には、車海老のちょっとした秘密が隠されているようです。
車海老は江戸時代から東京湾の海の幸として漁獲され、その美味しさが爆発的に広がりました。今でも江戸前の寿司や天ぷらには欠かせない食材として定着しています。
馴染み深い日本の車海老は、天然物の漁獲量が激減し、今は養殖物が主流となり私達の食を豊かにしてくれています。
ところで、車海老という名前ですが、そもそも「車」が付く由来とは何か、素朴な疑問として気になりませんか?
車海老に関する小さなハテナを見つけながら、海老全般にまつわる雑学に触れてみましょう。
私たちの食卓を賑わす人気の食材、海老から得られる想像力と車海老の美味しさの秘密を知り、あなたの引き出しネタを増やしてみましょう。

車海老に関する素朴な疑問集

車海老に関する素朴な疑問集

万人に愛されている身近な食材とは言え、あなたは海老の種類や用途をどのくらい知っていますか?
伊勢海老、車海老、芝海老、桜海老など、大きなサイズの海老から爪の先ほどの小さなサイズの海老までと、形や種類、味わいも様々あるでしょう。

そのひとつ、「味の車海老」と称されるほど溢れる旨味をもつ車海老は、一流料亭が太鼓判を押し、日本料理の豪華な一品であることはよく知られています。
伝統的な正月料理であるおせちの定番としても目にする車海老は、全身に縞模様のある、15㎝くらいの長さをした大型種の海老です。

車海老は日本人にとって認知度の高い海老だと思われますが、なぜ「車海老」と呼ばれるようになったのか、その由来を知る人は意外と少ないかもしれません。
それでも車海老の存在は生活に浸透しており、旨味成分であるアミノ酸を豊富に含んでいるプリプリとした心地よい食感は、天ぷらや塩焼きなど素材の味を活かした料理にぴったりの食材として人気があります。

高級食品に位置付けられている車海老は、お中元やお歳暮などの贈答品としての需要もあり、目にする機会が多い海老と言えるでしょう。
多くの車海老ギフトは、「活き車海老」とうたって、生きたままおがくずに包まれ輸送されています。
とても特徴ある運搬方法で、気になりますね。
さらに、海老はなぜ加熱すると赤くきれいに色づくのかなど、海老に秘められた不思議にも着目していきます。

「車海老」名前の由来

車海老という呼び名は、既に江戸時代(1603年~1868年)初期の頃から普及していました。 名前の由来は諸説ありますが、有力なものをひとつ紹介します。

車海老は、頭から胸や甲の部分にかけて斜めに褐色の縞模様が入り、腹部は横に縞模様のある姿をしています。
縞模様の車海老が背中を丸めると縞模様が放射線状となり、その姿が車輪のように見えるため「車海老」と名付けられたそうです。
現代では、車輪と聞くと自動車や自転車を思い浮かべる人が多いと思います。
しかし江戸時代に付けられた名なので、当時の荷車や馬車で用いられた大きな木製の車輪をイメージしたほうがピンとくるのではないでしょうか。

サイズによって異なる呼び名

車海老は用途に合わせて買い付けしやすいよう、サイズによって呼び名が異なります。
「車」を付けて呼ばれるのは15cm、25g程の大きな海老で、それよりまだ小さな状態は「巻(まき)」と呼ばれています。

さい巻き
漢字で「細巻き」や「鞘巻き」と書き、「小巻き」と呼ぶこともあります。
体長が10㎝以下の小型の車海老の呼び名です。
身が柔らかく味が濃厚で、かき揚げ、茶碗蒸し、土瓶蒸しなど、様々な料理に用いられています。
中(ちゅう)巻き
「巻き」と呼ぶこともあり、体長10㎝以上のものを「中巻き」と呼びます。
皮を剥いてそのまま口へ入れる、踊り食いに向く大きさです。
車(くるま)
体長15㎝以上を「車」と呼び、大きさを活かしたフライや塩焼きなどに用いることが多く、見た目にも満足感のある大きい車海老です。
大車(おおぐるま)
体長20㎝以上の立派なサイズの車海老です。
大人の男性の手のひらを越す程の大きさで、見た目のインパクトも食べ応えも抜群です。
ただ大きい分、やや大味になる傾向があるそうです。

生きたまま輸送される車海老

活き海老の輸送には、海水梱包ではなくおがくず梱包が用いられることが多いです。
生きたままおがくずに詰められて「活き車海老」と銘打った新鮮な海老が贈られていますが、「捌くのが怖い」とか「おがくずから出すと、ピョンピョン跳ねて驚いてしまう」と、魚介類の調理に慣れていない人には少々調理しにくい面もあるようです。
また、「水から上げられて輸送途中に死なないのか?」「活きたまま運ぶのは何か意味があるの?」と、疑問も浮かんでくるでしょう。

車海老を生きたまま輸送するのには、決定的な訳があります。
車海老は、死ぬと急速に鮮度が落ちていき、生臭みが出てしまう欠点があるのです。
そのため、市場でも死んだ車海老の商品価値は大きく下がり、値段がとても下がってしまうと言います。
活き車海老は抜群の鮮度で自宅へ届くため、プリプリの食感が魅惑的なお刺身でも楽しむことができるので人気があるのです。

実は車海老は、頭部のエラに水分を蓄えておける構造をしており、その水分に含まれている酸素を利用して、数日間は海水なしで生きていけます。
さらにおがくずの中に埋めて輸送すると、おがくずがエラの蓋代わりとなり、エラの中の水分を保持してくれるため、数日間の輸送に耐えられる分の水分をキープすることができるのです。
おがくずには、保温、保湿、衝撃材としての役割があり、車海老は冬眠状態にして15℃前後の環境で届けられています。

では、気になるおがくずと車海老の関係について説明しましょう。

だからNO.1!「味の車海老」

車海老が「味の車海老」と称されるのには、れっきとした理由があります。
車海老のキュッとしまった身に脂肪は極少なく、たんぱく質と水分が多く含まれています。
たんぱく質は、旨味成分を多く含んだ20種類のアミノ酸から構成されています。
特に車海老のタンパク質は、甘味のあるアミノ酸「グリシン」「プロリン」「アラニン」を多く含み、旨味成分のグルタミン酸も多く含有している旨味の宝庫と言えるでしょう。
海老の身の甘みはアミノ酸によるもので、炭水化物(糖質)はゼロです。

他の栄養成分として、抗酸化作用や美肌効果をもたらすビタミンC、Eを含んでおり、DNAの生成を助けるビタミンB12が豊富であることが特徴です。
また、車海老の身には青魚と同じ多価不飽和脂肪酸DHAも含まれ、身体に嬉しい栄養が満載なのも魅力的です。

車海老を口に入れた時に感じる甘味と旨味のバランスは絶妙で、魅惑の味わいをもたらす至福の食材として人気があるのです。
甘味、旨味、食感のバランスを重視する天ぷらには、車海老がベストと言われています。
プリプリとした海老特有の歯ごたえや弾力は、揚げても焼いても蒸しても損なわず、車海老は海老の中でもトップの美味しさを味わえるのです。

世界レベルで知る海老のイマジネーション

世界レベルで知る海老のイマジネーション

私たちの知っている海老は、家庭のちょっとしたご馳走であり、めでたい席には欠かせない晴れの日向きの食材です。
また、言い伝えられる様々なことわざに登場するなど、日本人にとって縁のある近しい生き物と言えます。
茹でると赤くなる縞と身の白さは、縁起のよい紅白を連想させ、結婚式やお節料理などの吉日用に当たり前に用いられています。

しかし世界には、食文化の違いや教義で食の規律があり、エビを食べる習慣のない人たちもいます。
他国から見て、日本人のエビ好きはただ味に関することだけでなく、「ゲン担ぎ」という独自の文化をもっている面が珍しく、関心のあるところではないでしょうか。

海老が登場することわざをピックアップしつつ、なぜ昔から海老は長寿や縁起のよいシンボルとされてきたのか、ちょっとした豆知識を紹介します。

なぜ海老は縁起がいいの?

日本で縁起物とされている海老は、結婚式や七五三、お節料理など、晴れの日に相応しい食材として人々の生活に寄り添い、身近に食べられてきた食材です。
車海老に限らず、伊勢海老、甘海老など、地で獲れるいろいろな種類のエビが愛されてきました。

漢字で「海」+「老」と表す「海老」の姿や色味から、人々は海老に「福」をイメージしていたことが伺えます。
海老はその美味しさにプラスして、人々の目を楽しませ、幸せを運んでくれる、嬉しい食事の象徴ともなっています。

「長寿」「永遠の若さ」「生命力」「めでたさ」「運気上昇」五つのシンボル

海老は、長い髭をもち腰の曲がった姿から、「長寿」の老人をイメージさせます。
また、自身の殻が固くなると脱皮を繰り返し、徐々に成長しながら新しく生まれ変わる海老は「永遠の若さ」や「生命力」の象徴として縁起がよいとされています。
そして、見た目にも美しく料理を華やかに彩る海老の殻の赤色と身の白さは、吉日に相応しい紅白を連想させ、その姿は「めでたさ」の代名詞的存在とされ、晴れの日の料理に取り上げられることが多いのです。
さらにピョンピョンと威勢よく跳ね回る海老の生態は、「上へ上がる」ことを連想させる運気上昇のイメージに合い、祝いの膳にぴったりです。

参考文献:一般社団法人 日本海老協会

ことわざに登場する海老

日本には、何万という多くのことわざが今に伝えられていますが、世界にも格言や教訓となることわざが存在しています。
海老は世界中で色々な品種が食べられているため、海老にまつわることわざも各国で生まれてきました。

海老にまつわることわざを見ていくと、日本でも世界でも、小さな存在でありながら海老の美味しさが愛されていたり、殻に覆われ立派なハサミをもった海老の見た目をいかめしいと感じた先人もいたりと、人々の関心を集める存在であったことがわかります。
ほんの一部ですが、世界中の海老を使った面白いことわざを紹介します。

海老で鯛を釣る(日本)

小海老で貴重な鯛を釣ることの例えから、少しの労力や元手で大きな利益や収穫を得ることをいいます。

海老の鯛交じり(日本)

小物が大物の中に混じっていることの例えで、能力に見合わない地位にいることなどの例えです。

海老と名の付く家老殿(日本)

人の上に立ち威張っているのに、中身が伴わないことの例えです。

海老食うたる報い(日本)

美味しい海老を、いつまでも食べられるとは限らないことの例えです。
良いこともあれば、悪いことも起こりえることを表しています。

眠っている海老は流される(スペイン)

日本では「油断大敵」と同じ意味で使われていることわざです。
注意を払っていないと、思わぬ失敗をするという例えです。

波乗りは小海老のサンドイッチで(スウェーデン)

生まれながらの豊かな暮らしでお気楽な人生を送っていることを比喩した言い回しです。

クジラが争うと海老の殻が割れる(韓国)

クジラの様に、大きな力をもった者が争いを始めると、被害に合うのはいつも力の弱い民衆であることを表したことわざです。

車海老は美味しくて面白い

車海老は美味しくて面白い

美味しく心弾む食材の車海老には、知っているつもりで実は知らなかった魅力が隠されていたようです。
車海老は、見た目の美しさや艶やかさ、縁起のよい五つのシンボルをもった食材であること、そして何より美味しいことが、私たちを魅了してやみません。

江戸時代になり東京湾でたくさん獲れた鮮度のよい車海老は、天ぷらや寿司として庶民の食卓に頻繁に登場し食べられるようになりました。
車海老はエビの美味しさを日本中に広めた人気食材となったのです。
私たちの日々の食卓や大切な行事を振り返ると、喜びと共に海老の登場があることに気づかされます。

この記事で取り上げた車海老は、すべての海老の中でもトップクラスの甘味と旨味をもち、大切な人たちへの贈り物として大変人気があります。
車海老にはビタミン、ミネラル、DHA、など体によい栄養素が豊富で、良質なたんぱく質を多く含み、生でも加熱してもその美味しさをダイレクトに味わうことができます。

活きた車海老の配送には、海老のエラ呼吸の特性を利用したおがくず包装が用いられ、温度や湿度を保ちながら、鮮度を保った流通が可能です。
そのため新鮮さが命の車海老を美味しく調理することができ、その持ち味を最大限に発揮することができるのです。

古くから世界中で食べられてきた海老にまつわることわざは奥深く、馴染みがありながらも初耳だった雑学を通し、海老という生き物の面白さに改めて気づかされたことでしょう。
また車海老のうんちくを知ると、外食で料理として出てきた時や贈答品として頂いた時など、「あっ本当に車輪みたい」と感動もひと味違いますし、活き車海老に驚きつつも「だから捌きたての美味しさは絶品なのね」と納得できることと思います。

縁起がよいと言われる理由や美味しさの秘密を知っていると、車海老の美味しさが倍増し、家族や友人の集まる特別な日の舌鼓も心地よく高鳴ることでしょう。
車海老は、私たちの食卓を彩りよく賑わせてくれると共に、話のタネになる興味深い生き物として、より身近に感じられたのではないでしょうか。

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