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世界のエビ料理

エビは和洋中様々なジャンルの料理に登場し、メインとなる主役級の食材です。
エビの魅力は弾けるような弾力ある食感と、口いっぱいに広がる甘みと旨味にあるのではないでしょうか。
生でも茹でても揚げても炒めても美味しいので、どんなジャンルの料理にもマッチする優れた食材です。
そのうえ高タンパク質でありながら低カロリーなのでダイエッターの味方であると言えるでしょう。
またエビの特徴のひとつである美しい赤色には、美容や健康に効果のあるアスタキサンチンが含まれており、各方面から注目が集まっています。
地球上に生息している甲殻類のエビの中には日本では食べられていない種類もあり、各国に独自の調理方法の料理も存在しています。
世界ではどのような種類のエビが調理されご当地料理に仕上げられているのか探ってみました。大きさ、食感、旨味、甘味など、種類や料理ごとに数々の楽しみや驚きを味わえるでしょう。
また、人々の体調を美味しくサポートしてくれるエビの効能についても併せてご紹介します。
世界が愛してやまないエビ料理の魅力を追求していきます。

エビは美味しいだけじゃない

エビは美味しいだけじゃない

プリプリとした食感が心地よく、旨味と甘味を兼ね備えたエビは、その美味しさから世界中で人気のある食材です。
エビの価値はその美味しさだけではなく、私たちの身体によい影響を与える様々な栄養をもっているのが嬉しいところです。

身体を健康に維持する上で必要なたんぱく質やビタミンを併せもち、沢山食べても太りにくいエビの栄養について、掘り下げてみました。
食べて美味しく、身体にも優しい正に一石二鳥なエビの凄さにますます惹かれること間違いなしです。

エビの栄養と健康効果

一般的にエビが含有している栄養には次のようなものがあります。
先ず注目すべき点として、エビは沢山食べても太りにくいのはなぜでしょうか。
カロリーや糖質を気にされている人には朗報で、エビの身は約3割がたんぱく質、約6割が水分でできています。
100g摂取しても糖質や脂質は0.5g未満なので、ダイエット中でも気にせず食事を楽しめます。

たんぱく質は多くのアミノ酸が結合して構成されており、筋肉、皮膚、内臓など、身体の様々なパーツを作るのに必要な栄養素です。
そして、このアミノ酸の中には、旨味成分として有名な「グルタミン酸」や「アスパラギン酸」を含んでいるため、エビは旨味のある食材として評価されているのです。

さらにエビの栄養素で注目すべきは、アミノ酸の一種であるタウリンです。
タウリンは、私たちの身体や細胞を正常な状態へ戻そうとする作用があります。
血中の悪玉コレステロールの増加を抑制し、善玉コレステロールを増やす働きをします。
目の網膜の働きをサポートし、疲れ目や目の老化防止に役立つので、目を酷使しがちな現代人には是非摂って欲しい栄養素と言えます。
タウリンには、動脈硬化の予防や血圧を正常に保つ効果もあり、肝機能の働きを強くしてくれるなど、嬉しい健康効果が目白押しです。

他にも、若返りのビタミンと呼ばれる強い抗酸化作用のあるビタミンEや、エビの殻や尻尾に含まれる骨を強くするカルシウムなどを含み、エビは丸ごと食べたい食材と言えます。

ただし、エビはプリン体を多く含有しているため、尿酸値が高い人は摂取量に注意が必要です。

驚異の抗酸化パワー「アスタキサンチン」

エビに含まれる、美容業界で話題の健康成分をご存知でしょうか。
その話題の成分は、高い抗酸化力をもつ「アスタキサンチン」と呼ばれる色素です。

多くのエビは、生の状態ではくすみのある赤緑がかった茶系、黒っぽい色合いの殻をまとっているように見受けられます。
しかし炒めたり茹でたりして加熱をすると、見事なまでの美しい赤色へ変色します。
このように赤く色づく物質が、エビの殻に含まれている「アスタキサンチン」という色素なのです。

アスタキサンチンが発見されたのは、1938年と割と最近になります。
アスタキサンチンはカロテノイド色素の一種で、優れた抗酸化力をもつとして認知度の高い「リコピン」や「β-カロテン」と同類の成分になります。
また、抗酸化力をもつビタミンとして認知されているビタミンEと比較すると、アスタキサンチンはビタミンEの1000倍以上もの抗酸化力があると言われています。

この優れた抗酸化力は、老化防止や美肌効果が期待され、様々な美容系の商品に活用されています。
アスタキサンチンを摂取すると、身体の酸化を還元する能力が高いため疲労回復にも効果があります。
例えば、目の周りの血流をよくし眼精疲労が改善されるので、パソコンやスマートフォンなど、目を酷使しがちな現代人には有難い効果が期待できます。
さらに、しなやかな血管を保つ働きで動脈硬化の改善にも活躍している成分なのです。

生のエビの青緑色っぽい色味は、実はアスタキサンチンがたんぱく質と結合し、変化した状態だったことがわかりました。
エビを加熱することにより、たんぱく質と分離されたアスタキサンチンが元の赤色を取り戻すという訳なのです。
しかしエビの種類によっては、鮮やかな赤色になるものもあれば、黒っぽい赤みくらいまでしか色付かないものなど様々です。なぜでしょうか?

実は、体に赤色を有しているエビなどの甲殻類や魚類(鯛・鮭など)の生き物は、生まれた時からアスタキサンチンを含有している訳ではありません。
アスタキサンチンは、ヘマトコッカスという藻が、海の過酷な環境に耐えられるように、自身の細胞壁を守るために生成しています。

このヘマトコッカスを餌として食べるプランクトンや微細生物は、体内にアスタキサンチンを摂り込みます。
エビはそれらを餌とし摂取することで体内にアスタキサンチンを摂り込んでおり、このような食物連鎖で海洋生物を中心にアスタキサンチンは広がっているのです。
アスタキサンチンの含有量と、生息している水深や環境など、様々な条件の違いでエビの赤み度合は個体差として表れています。

エビ料理を探求する

エビ料理を探求する

世界中の海には、実に約300種類のエビの生息が確認されており、食用として主流なものは約20種類ほどあります。
使うエビの種類、組み合わせる相性のよい食材、煮るか、炒めるか、揚げるかなど、「エビ」というひとつの食材から生み出される美味しさは未知数と言えます。

気候も環境も異なる各国のエビ料理は、ご当地ならではの調理法からエビの美味しさを存分に引き出したものばかりで、エビ料理を巡れば、それこそ世界一周ができると言っても過言ではありません。
手に入る食材の違いや風土にあった盛り付け等、きっと想像を超えるものもあるでしょう。

異国のエビを使った料理からは、味付けや香辛料の使用にご当地ならではの嗜好や個性が伺えます。
郷土料理として愛されてきた各国のエビ料理を探求し、エビの美味しさを再認識できると最高です。
エビの種類からエビの料理まで世界を巡ってみましょう。

食用エビの種類とその特徴

「エビ」とひと口に言っても、桜海老のように小振りなエビから、伊勢海老やロブスターなど、王者の風格を称えた大物のエビまで形も大きさも様々です。
ここでは、食用のエビ(ザリガニの近縁種も含む)で代表的なものをピックアップしてそれぞれの特徴を説明します。
似た種類もあるため、自分が食べているエビの種類や産地に興味が湧くかもしれません。 便利な冷凍エビの普及で忘れがちなエビの旬も意識してみましょう。

伊勢海老

イセエビ科の代表格である伊勢海老は、体長約30㎝にもなる大型種です。
オスはメスより成長のスピードが早く、ハサミが大きくて触角と歩脚も長いのが特徴です。
茨城県以南の太平洋、九州沿岸、東シナ海南部にあたる中国沿岸から台湾に生息しており、日本では、三重県、千葉県、長崎県が名産地として有名です。
伊勢海老は天然資源です。乱獲を防ぐことを目的に、産卵時期となる夏に禁漁期を設けているため、漁が行われる10月~4月が旬になります。
立派な髭と腰が曲がった風貌は、長命の老人を連想させることから、不老長寿の象徴としてお正月や結婚式など、祝賀の縁起食材として用いられています。
伊勢海老は味のよい高級エビなので1㎏数千円以上の高値がつき、日常食向きではありませんが、特別な日の料理を豪華に彩るに欠かせない立派な海老です。

車海老

体長15~25㎝のクルマエビ科を代表する種類の高級海老です。
北海道南部以南、東南アジアからインド洋沿岸、紅海、地中海と世界中に生息しています。
天然ものの漁獲量は減少しており、国内で流通している約9割は養殖ものです。
養殖の生産コストが他のエビよりかかるため高級食材として流通しており、天ぷらや寿司など一流料亭や高級寿司屋で、ネタの花形として使われています。
旨味成分であるアミノ酸の含有量が高く、加熱すると旨味と甘味が格段に増します。
「姿の伊勢海老、味の車海老」と謳われるほど、独特な甘味のあるとても美味なエビです。

ブラックタイガー(ウシエビ)

「ブラックタイガー」の名前で親しまれていますが、正式な名前は「ウシエビ(牛海老)」と言い、世界各地で食されているエビの中でもポピュラーな種類です。
体長は約30㎝の大型種で、クルマエビ科に属します。
西太平洋、インド洋の熱帯・亜熱帯の海域に広く生息しています。
1980年代に日本の車海老消費が加速した際、供給が追い付かなくなったため台湾から輸入されるようになり今日に至ります。
家庭の食卓で使いやすい価格と、高級エビの車海老に近い味わいをもつことから、今では東南アジア各地で盛んに養殖が行われ、国内で流通しているものはほぼ養殖ものが占めています。

バナメイエビ

クルマエビ科の一種で、体長は約20㎝の中型種です。
原産地は東太平洋で、メキシコからペルーにかけての沿岸に生息しています。
車海老やブラックタイガーに比べて体の縞模様が薄いのが特徴です。
ブラックタイガーより若干お値ごろで、その分旨味がやや弱い傾向にあります。
むきえびとして流通していることも多く、家庭で手軽に取り入れられる使い勝手のよい種類です。

シバエビ

クルマエビ科の一種で、大きいものは15㎝前後まで成長しますが、一般的に流通しているものは10㎝以下の小振りなものが多くなっています。
日本海側は新潟県、太平洋側は東京湾を最北とし、そこから南の西日本や黄海、東シナ海、台湾までの東アジア海域に生息しています。
体にゴマの様な点が散らばり、新鮮なものは薄い灰色で、鮮度が下がってくると白っぽくなっていきます。
生食より加熱した料理向きのエビで、少々水っぽさがありますが、殻が軟らかいので天ぷらや塩焼きなどにすると美味しいです。
昔、東京の芝浦で水揚げ量の多いエビだったため、「芝海老」と名付けられました。

甘海老(ホッコクアカエビ)

「甘海老」の呼び名で知られている小振りなエビの正式名称は、「北国赤海老(ホッコクアカエビ)」です。
体長は12㎝ほどで、鮮やかな赤色をしています。
タラバエビ科の一種で、名前が表している通り寒海性のエビで、身は甘くとろけるような食感です。
殻が軟らかいため、素揚げにして殻ごと食すことができます。
子持ちの甘海老は腹部に抱えた青い卵が珍味として人気があります。また、頭部の濃厚なミソも美味で、すすって食べられています。
旬は冬で、北太平洋の深海が主な生息海域であり、日本では北海道、新潟県、富山県での漁獲が主流となっています。

ボタンエビ

体長20㎝ほどの中型種で、生きていると牡丹の花のように鮮やかな発色をしていることからこの名が付きました。
タラバエビ科の一種で、ギザギザとしたのこぎりのようなたてがみを持っています。
近縁種が複数存在し、広義の意味で一般的に「ボタンエビ」と称すことが消費者庁により許可されています。
本牡丹海老は、日本海側には生息が確認されておらず、太平洋側の宮城県沖以南にだけ生息する日本固有種ですが、現在は数が減少していてあまり漁獲できなくなっています。
そのため、国内で漁獲できる近縁種のトヤマエビが主にボタンエビとして流通しており、富山をはじめとした日本海側でよく漁獲され、北海道が最も有名な漁場となっています。
旬は春と秋の2回訪れ、特に秋はエメラルドグリーンにかがやく卵を抱えた子持ちボタンエビが出回ります。
ねっとりとした甘みともちっとした魅惑的な食感の身は、お刺身で食べると絶品です。

ホッカイエビ

北西太平洋沿岸の藻場に生息しているタラバエビ科の一種です。
体長12㎝ほどの小振りな種類で、緑色を帯びた体色に褐色の縦縞が入った姿をしています。
標準和名は「ホッカイエビ」ですが、市場では「ホッカイシマエビ」の名で取引されています。
日本では、宮城県以北に生息しており、主な漁場は北海道の東部です。
近年、収穫量は減少しているため、希少なエビです。
鮮度が落ちやすいため、一般的に茹でたものを冷凍して流通しており、茹でたホッカイエビは真っ赤にきらめくその姿から「海のルビー」と呼ばれ、濃厚な味わいが人気の高級なエビです。

アカザエビ

オレンジに輝く姿は「エビのプリンセス」との呼び名を持ち、体長25㎝前後になる大型種の最高級品のエビです。
ザリガニの近縁にあたるアカザエビ科の一種で、細長く伸びているハサミ脚がトレードマークになっています。
日本近海にのみ生息する日本固有種で、「Japanese lobster」と呼ばれています。
銚子から日向灘にかけての太平洋沿岸が漁場となっており、東京湾、駿河湾、三河湾が主な漁場として有名です。
レストランで「テナガエビ」と称されていることもありますが、標準和名でいうテナガエビとは異なる種です。
甘味が非常に強く、濃厚な旨味をもつことから美食の食材として人気で、フレンチでは「ラングスティーヌ」、イタリアンでは「スキャンピ」と称して扱っています。

サクラエビ

サクラエビ科の一種で、深海に生息する体長4㎝ほどの大変小さなエビです。
体は透き通るような透明感があり、殻に赤の色素を多く含有しているため、見た目は桜の花の様な美しいピンク色をしています。
サクラエビの美しさは駿河湾のルビーとも言われ、「海の宝石」と称されています。
日本では、駿河湾、東京湾、五島列島沖に分布が確認されていますが、国内で漁獲が認められているのは駿河湾だけなので、流通しているサクラエビは100%、静岡県の駿河湾産です。
駿河湾産のサクラエビは、体表に発光体を多くもち、これが多いことで旨味と甘味の濃い味わいとなっています。
また、カルシウムやタウリンなどの栄養も豊富で、子供からご年配の方まで幅広く摂って欲しいお勧めの健康食材です。
漁期は、3月中旬~6月初旬の春漁と10月下旬~12月下旬の秋漁の年に2回のみで、それ以外の時期は禁漁期間としてサクラエビを乱獲しないよう保護しています。
サクラエビ老漁の許可証をもつ船は、由比、蒲原、大井川地区の合計120隻のみに限られています。
台湾でも漁獲が始まり、近年は台湾からの輸入物も増えてきました。

シラエビ

一般的に「シロエビ」と呼ばれることの多いオキエビ科の一種で、漢字で「白海老」と表記されています。
日本近海に広く分布する体長5~8㎝と桜海老よりやや大きい小型種で、寿命は2~3年と短めの儚く美しいエビです。
漁期は4月~11月と長期間に及びますが、日本では富山湾特有の「藍瓶(あいがめ)」と呼ばれる海底谷だけが唯一漁が成り立つほどの漁獲量があり、「富山のさかな」としてご当地食材に認定されています。
水揚げ直後は透明感のある淡いピンク色をしており、そのキラキラとした輝きから「富山湾の宝石」と商標登録されブランド化しています。
甘味のある身は寿司種やかき揚げ、エビ団子など様々な料理に用いられています。
また、素干しを始め、塩からや味噌、ピクルス、煎餅など、様々な加工品となって流通しています。

ウチワエビ

セミエビ科の一種で、体長20㎝前後の中型種のエビです。
体を折りたたむようにして鳴らす威嚇音から「パッチンエビ」とも呼ばれています。
日本では千葉県から九州にかけての沖縄付近に分布しており、国外ではインド太平洋の熱帯から亜熱帯の海域に生息しています。
日本近海には、近縁種のオオバウチワエビも生息しており、市場では区別されることなく同種として扱われています。
名前の通り、団扇の様な平べったい身体で、殻は硬く身がしっかりと詰まっていて、数あるエビの中でも歩留まりのよいエビとして有名です。
冬から初夏にかけてが旬となり、秋には内子と身肉が楽しめます。
身は旨味と甘味が濃く、殻からはとてもよい出汁が出るので、塩焼きやお刺身などのほか、味噌汁や鍋などお勧めのレシピも多様です。

ロブスター

ザリガニの近縁種、アカザエビ科の一種で、主にヨーロッパで漁獲される「ヨーロピアンオマール」とアメリカで漁獲される「アメリカンロブスター」の二種が流通しています。
ロブスターという呼称は英語で、オマールはフランス語になります。
食材としては、「オマール海老」と呼ばれて扱われることもあります。
北東大西洋、地中海、北欧、南アフリカと、広範囲に分布しており、獲れる海域によって体色に違いが見られます。
この種は、とても好戦的で水槽の中にて仲間同士傷つけ合ってしまうため、水槽に入れる前にハサミを固定して対処しています。
体長50㎝ほどの大型種で、アメリカンロブスターは体長120㎝にもなる個体が漁獲されたこともあります。
エビ・ザリガニ類の中では最大級の大きさをもち、アメリカンロブスターの方が大きく、食べ応えがありますがやや大味で、漁獲量の少ないヨーロピアンオマールの方が、旨味と甘味が濃厚で味がよいとされています。
身質は白く、弾力があり、タラバガニに近い食感と言われています。
縦半分に割り、グリルやグラタン風にアレンジ、アメリケーヌソースに使うなど、濃厚な味わいを活かした料理が多くあります。

セミ海老

セミエビ科の一種で、体長30㎝ほどの大型種です。見た目はずんぐりとており、蝉に似ていることから名づけられました。
セミエビ科の仲間はどれも体が扁平ですが、セミ海老は中でも少し体に厚みがあり、赤褐色の硬い殻をもっています。
身がぎっしりと詰まっているため、歩留まりはよく、上品な甘味のある味わいは高級食材として高値で取り扱われています。
伊勢海老よりも野性味を感じる濃厚な味わいのセミエビは、どんな料理にしても美味しく、1㎏当たり数万円の値が付くこともあり、主に高級料亭などに卸されています。
インド太平洋の熱帯から亜熱帯に生息している温暖な海域を好む種類で、日本では千葉県から九州、沖縄にかけての太平洋沿岸に生息していますが、漁獲量は少なく希少価値性の高い種類とされています。

地球丸ごとエビ料理の数々

食用としてメジャーな数十種類を挙げましたが、はっきりとした違いが分かりやすいものから、さほど味の違いはないのだろうか?と感じるものなど、エビという食材を理解するのは難しいのかもしれません。

しかし、エビを口にして感じる強い旨味や甘さは世界中の人々を惹きつけ、エビの見た目やサイズ、味わいなどの特徴を活かした、お勧めの食べ方が国々に存在しています。
クセのないエビの自在な美味しさは国境を越え、ハワイ島の名物ガーリックシュリンプや、香港で人気のエビワンタン麺などは世界中に広まり、多くの人々の胃袋を幸せで満たしています。

ここでは各国の代表的なエビ料理だけでなく、比較的認知度の高いメニューを取り上げてみました。
ご当地日本のエビ料理から、アジアやヨーロッパ、アメリカなど、世界で愛され食されている美味なるエビ料理の数々を紹介します。
エビの種類、相性のよい食材、煮る、炒める、揚げるなど、「エビ」というひとつの食材から広がる世界旅行を楽しみましょう。

エビの天ぷら(日本)

エビの天ぷらは、小麦粉を卵水で溶いた衣を新鮮なエビにまとわせ、植物油でカラリと揚げた料理です。
高温の油で衣をサクサクに揚げ、素材のエビはジューシーに甘味と旨味を引き出すように蒸しあげます。
シンプルが故に、素材の目利きと、衣の作り加減、揚げ具合と、繊細な工程を経て出来上がる職人の技にかかった料理といえます。
美しさと食べやすさを追求し、丸まるエビの背を伸ばしたり、尾に隠し包丁を入れるなど、細かな仕事が施されています。
江戸時代の屋台でファストフードとして始まった天ぷらは家庭料理としてだけでなく、全国の老舗料亭などでは濃厚な旨味が天ぷら向きとされている高価な車海老などが調理され、世界に誇る人気の日本料理として紹介されています。

乾焼蝦仁(中国)

中華料理の中でも定番の、日本人が考案した「エビチリ」として親しまれているメニューです。
日本のエビチリはトマトベースのまろやかなチリソースですが、本場四川料理では豆板醤の辛味とパンチが効いた乾焼蝦仁(カンシャオシャーレン)という料理が本場の味となります。
乾焼蝦仁とは、エビの殻をむいて卵白と片栗粉の衣をつけ揚げておき、豆板醤、長ネギ、ニンニク、ショウガ、花椒、香辛料、鶏がらスープ、酒醸等を合わせたソースに絡めたものです。
エビのプリプリとした食感と、豆板醤や生姜、にんにくの深みある辛味が一体となり、エビの旨味を中華ならではの調味料と香りが包み込んだ逸品です。
四川省は年間を通して湿度の高い地域のため、料理に保存のきく香辛料などが用いられるのが特徴です。

トムヤムクン(タイ)

世界三大スープのひとつとされており、爽やかな香りの香草レモングラスを用いた酸味のあるスープです。
「トム」は煮る、「ヤム」は混ぜる、「クン」はエビを指します。
エビの殻とチキンでスープを取り、コブミカンとレモングラスの葉で香りを高め、青唐辛子や生姜類で辛味を加えています。
ポピュラーな具材は、海老とふくろ茸と呼ばれるキノコで、タイの伝統的な調味料ナンプラーやライム果汁で味を整え仕上げます。
本場タイでは、コブミカンの葉を入れないトムヤムクンは邪道とされるほど、コブミカンの葉の爽やかな香りはトムヤムクンに欠かせないものと言われています。
また、タイでは魚介類をすり身にして利用する文化があり、エビのすり身にパン粉をつけて揚げたトートマンクンも有名です。

生春巻き(ベトナム)

日本で浸透しているベトナム料理の代表格に生春巻きがあります。
生春巻きは、米粉を原料としたライスペーパーでエビや豚肉、好みの生野菜を具材として包み、甘辛なスイートチリソースを付けて頂きます。
ライスペーパーを湿らせたあとは手早く作業するのが美味しさのコツで、緑豆春雨と人参、パクチー、サニーレタスをベースに、プリプリに茹でたエビを巻けば、ライスペーパーから赤いエビが透けて、見た目にも美しい逸品が出来上がります。
ベトナム料理の特徴である「五味・五彩・二香」は、味や見た目の美しさ、香りのトータルバランスを大切にしています。
エビはヘルシーで味も彩りもよく、ベトナム料理でも人気の食材です。

グリルロブスター(アメリカ)

アメリカのエビと言えば、日本で言う伊勢海老と同等の大きさを誇る「アメリカンロブスター」がその代表格です。
大きなハサミから、尻尾までぎっしりと身が詰まっており、あれこれ手を加えなくとも素材の旨味だけで十分ご馳走となる食材です。
グリルロブスターは、縦半分に割ったロブスターの殻から身を取り出し、食べやすい大きさにぶつ切りにした後、白ワインを揉みこみます。
殻へ身を戻し、オリーブオイルやバター、塩やハーブソルトを振って、マヨネーズやチーズを乗せて焼き上げます。
ブリッとした弾力のある食べ応え120%の身は、おもてなし料理にもうってつけです。
17世紀初めの海岸沿いのアメリカ先住民たちにとって、昆虫のような姿をしたロブスターは畑の肥やしであり、貧しい労働者たちの食材だったといいます。
しかし今では大統領の晩餐会に使用されるほどの高級食材として親しまれています。

テルミドール(フランス)

ヨーロッパで獲れる代表的なヨーロピアンオマールで作る、ゴージャス感溢れるフランスの伝統料理です。
縦半分に割ったオマールエビをグラタンに仕上げたもので、日本で似た料理を探すなら、伊勢海老を用いたものを結婚式やお正月の席で目にしたこともあるでしょう。
ヨーロピアンオマールはアメリカンロブスターより、やや小振りですが、旨味が濃いとされています。
作り方は、オマールを茹で、縦半分に切り分けて身を取り出し、卵黄、生クリーム、マスタードやハーブの入ったベルシーソースと和えて殻に戻します。さらにチーズを乗せてオーブンで焼き上げています。
フランスはチーズ大国と呼ばれるほどチーズの種類が豊富で、テルミドーのソースにもチーズが使用されています。
フランス料理の基本となる洗練されたソースが決めてとなるエビ料理です。

ガンバス アル アヒージョ(スペイン)

アヒージョとは「刻んだにんにく」という意味の料理で、カスエラと呼ばれる耐熱性の陶器に刻んだにんにく(もしくはスライスしたにんにく)とオリーブオイルをたっぷりと入れて、食材をオイル煮にしたタパスと呼ばれる小皿料理です。
入れる食材は魚介類からキノコ、野菜まで多種多様で、中でも「ガンバス アル=エビ」のアヒージョは代表的なメニューです。
にんにくの香り豊かなオリーブオイルに熱されたエビの濃厚な美味しさと、エビの旨味が溶け込んだオイルにパンを浸して食べる、ふたつの美味しさを兼ね備えた料理です。
スペインは世界一のオリーブ生産国で、アヒージョはスペイン南部の郷土料理です。

カスエラ・デ・カマロン(エクアドル)

スペインの伝統的な陶器、カスエラ鍋で作ったエビの海鮮煮込み料理です。
世界一のバナナの生産高を誇るエクアドルでは、バナナが主食です。また、バナメイエビ養殖の発症の地で、世界三位の生産量を誇っており、バナナとエビという組み合わせも珍しくありません。
カスエラ・デ・カマロンは、玉葱、ニンニク、トマト、ピーマン、青唐辛子、香辛料を炒め、料理用のバナナペーストやピーナッツバターを加えてソースを作り、バターで炒めたエビを加えて煮込んだものです。
殻付きのエビで香りを出したり、白身魚を加えたり、魚介の旨味をふんだんに取り入れるのが特徴です。
赤道直下のエクアドルではスパイシーな味付けが好まれています。

ムケッカ(ブラジル)

ブラジルは多民族国家のため、郷土料理にも独自の進化が見られます。ムケッカは、ブラジルでは300年以上の歴史をもつ郷土料理です。
「ムケッカ」は、いわゆる海鮮シチューのことで、魚介類、玉葱、ニンニク、トマト、コリアンダーをベースに、水を一切加えず煮込む魚介の濃厚な旨味が溶け込んだシチューです。 ムケッカは発祥地が2箇所あり、それぞれ作り方に違いがあります。
エスピリトサント州のムケッカは原住民由来の「ムケッカ・カピシャーバ」。デンデ油をベースに、エビやロブスターなどの甲殻類をメインに調理されるクセのない味わいです。
バイーア州のムケッカは「ムケッカ・バイアーナ」。赤いパーム油とココナッツミルク、トマトをベースにエビや蟹を調理したアフリカ食文化の影響を感じられる味わいです。
アマゾン河で獲れるクルマエビ科の天然ピンク海老は日本にも輸入されており、甘みと香りのよさが特徴の高級エビとして流通しています。

家庭で簡単、下ごしらえのポイント

近年、家庭用として流通している冷凍エビは使い勝手がよく、簡単に手に入るありがたい食材です。
料理において、エビの美味しさを感じるには、何と言ってもあのプリプリとした魅惑の食感は大切にしたいものです。

しかし、家庭でいざ調理をしてみると、お店と違って身がパサパサとしてしまったり、旨味を損なってしまったりと、苦い経験をした人は少なくないでしょう。
ここでは、ほんのちょっとした下ごしらえで、エビの美味しさをぐんと引き出すことができ、エビ料理の成功率は格段にアップする方法を紹介します。
体に優しい栄養豊富な美味しいエビを家庭でも存分に堪能するため、簡単にできる下ごしらえのポイントをまとめました。

冷凍エビの解凍方法

冷凍食材を解凍する際、気をつけておきたいのが「ドリップ」と呼ばれる水分です。
このドリップには、水分と一緒に旨味も含まれているので、できるだけドリップを少なく解凍したいところです。
また、ドリップに浸かったまま解凍していくと、魚介類の生臭みが食材に残ってしまうので要注意です。
お勧めの解凍方法をおススメ順にご紹介します。

塩氷水解凍
低温を維持しながらゆっくり解凍できる塩氷水解凍がおススメです。
氷水に塩を加え、塩分濃度が約3%の塩氷水を作ります。そこに冷凍エビを直接浸けて解凍すると、水分や旨味が抜け出すことなく美味しく解凍できます。
密封解凍
ジップ付きの保存袋に凍ったエビを入れて、空気をしっかりと抜きます。
その袋のまま流水にあてれば、短時間で黒ずむことなく海老を解凍できます。
短時間解凍
エビがゆったりと入るくらいの湯を沸かし、沸騰したら火を止め濃い目に塩を入れます。
火を止めた状態で凍ったままのエビを投入し、箸で軽く混ぜながら15秒置いた後、ザルにあげます。
水分や旨味が逃げないよう手早く処理することがポイントで、プリプリした食感に仕上がります。

背ワタの取り方

背ワタはエビの大腸にあたり、エビの餌になったプランクトンや砂などが残っていることがあります。取り除いておくと食味を損なうことなく食べられます。
殻付きのまま背中を丸めた状態で、節に爪楊枝や竹串などを刺してゆっくりと引き上げて取る方法や、殻を剥いた背中に包丁で縦に切り込みを入れ、背ワタを取る方法があります。
最近は背ワタの少ない養殖エビなどもあり、気になる時に処理する程度でよいでしょう。

洗い方

殻を剥いたエビをボウルに入れ、少し多いかな?と感じるくらいの塩で揉みます。ねばりと共に臭みと水分が取れます。
次に片栗粉と水を加えてさらに揉みます。汚れが浮いてきて、水が濁ってきたらよく洗い流します。
しっかりと水分を拭き取ったら、下ごしらえ完成です。
(片栗粉は粒子が細かいので、エビの汚れなどを吸着する働きをします。)

世界中で太鼓判つき!エビの魅力とは

世界中で太鼓判つき!エビの魅力とは

各国で漁獲される様々なエビは、地域の伝統的な調理法やその国ならではの食材とのコラボレーションを経て、人々の食生活を楽しませています。
地球に生息が確認されている約300種類ものエビのうち、我が国で食用とされているものは約20種類ほどではありますが、私たちのお腹を満たすエビの魅力は語りきれません。

エビの個性を活かし、生食向きのもの、加熱することにより旨味が増すもの、プリプリとした食感を楽しむものや、ねっとりとした身を活かして調理するもの、殻から出汁を取りエビの風味を味わうものなど、楽しみ方も多岐に亘ります。
エビの種類や調理方法によって、違った食感や味覚に出会える楽しさが、エビが人々に愛されてやまない理由のひとつです。

また、驚くような食材とも相性がよい万能性をもち、味のバリエーションの多さにエビ好きの胸は高鳴ります。
専門店で海老料理を食べ歩くと、ちょっとした世界旅行をしている気分が味わえるでしょう。
まだ知らない海外の伝統エビ料理に挑戦してみると、新たな魅力の発見があるかもしれませんね。

そして、エビは美味しいだけでなく、日常の健康維持に欠かせない身体に嬉しい栄養効果や、アンチエイジングに働きかけてくれるなど、隠れた魅力をもっています。
エビの魅力のひとつである鮮やかな赤色、その秘密は加熱によって起る化学反応にありました。
加熱によって鮮やかに赤く色づくエビは、料理の彩りとして美しさを演出してくれます。そして、食べた人にも美しさを与えてくれるのです。

海老がもつ、幸福に満ち溢れる美味しさは、世界中の人々に愛されてやまない最大の理由でしょう。
お祝い事を豪華で贅沢なエビで演出し、幸せを噛み締めるもよし、手軽な冷凍エビを家庭でたらふく堪能するもよし、隠れた味わいの出汁を楽しむもよし。
今日も世界中の小さな幸せから大きな幸せと一緒に、人々の笑顔の食卓でエビが登場しているのです。

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