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西の伝統文化「神の魚ブリ」

笹の葉と鰤の切り身

数ある魚類の中でも、人の生き様や繁栄を象徴する何とも立派な魚がいます。
古くから神事や祭事、正月や結婚式など晴れの席に縁の深い魚「ブリ」です。
ブリが成魚となるには3年かかり、産卵期前の寒ブリは80cmを越える大型で栄養価の高い魚となります。
ブリは、成長と共に呼び名が変化する「出世魚」として有名で、その縁起のよさから神へ捧げる清浄な魚として選ばれてきました。
中でも、西日本の食文化に欠かすことの出来ない「年取り魚」には旬のブリが用いられ、年末年始の食卓を豪華に美味しく演出しています。
年取り魚とは、年越しの夜である大晦日に神様へ祀られる神聖な魚のことで、主に東日本はサケ、西日本はブリをお供えし、新しい年を迎える祝い膳として料理されます。
家族が揃う年末に、新しい年が幸多き年となるよう祈りを込めてブリを食べる風習は、縁起を好む日本人の生活や価値観の伝承となっています。
また、日本沿岸を回遊する魚種であるブリと人との歴史は広い地域に渡り、暮らしに密着した興味深い話がいくつもあります。
日本人は八百万の神を信仰の対象としており、日本ならではの大きな特徴と言えるでしょう。
人々がブリに馳せた思いやブリにまつわる文化について、古の扉を開いてみましょう。

神様へ捧げる魚「ブリ」

かぶら寿し

ブリは北海道以南から東シナ海までに生息している、日本近海固有の魚です。
日本近海でよく漁獲されるブリは、大きくなる過程で姿や味が変化することから、成長に伴い呼び名を変える「出世魚」として、縁起のよい魚と言われています。

また、冬の味覚と言われるブリは、北の海でしっかり栄養を蓄え、寒くなる時期に脂が増して美味しくなります。
特に12月から2月にかけて水揚げされる80cm級のブリは「寒ブリ」と呼ばれ、圧倒的な美味しさを誇ります。
お正月を迎えるごちそうの「年取り魚」として、お節料理になくてはならない食材としてよく知られている魚です。

ところで、日本の年始の食卓を巡り、地域によってサケ文化とブリ文化の違いがあるのはなぜでしょうか?
大晦日に用意される特別な祝い膳と、東のサケ、西のブリと東西を二分するお節料理に見える、地域のお国柄にも触れてみましょう。

年取り魚とは

年取り魚とは、年末に年神様を祀る際の供え物で、年越しの膳に並ぶ縁起物の魚のことです。別名、年越魚、正月魚とも呼ばれます。
東日本ではサケを、西日本ではブリを用いることが多く、他にもタイやマグロを食す地域もありますが、年取り魚を巡っては、全国的にキレイに東西に分かれてサケとブリの文化が分布しています。

古くから、年取り魚が並ぶ年越しの食卓は一年で最もご馳走が並ぶ日とされており、家の主はよい魚や食材を揃えるのに努力したと言われています。
「寒ブリ一本、米一俵」という言葉があったほど、冬に需要の高まるブリは、米一俵に匹敵する高価で貴重なものでした。
普段は肉も魚もない質素な食生活であっても、年に一度、ブリを年越しに食べることを習慣としてきた文化に、深い意味を感じます。

この年取り魚の習慣のすごさは、海沿いの地域だけでなく、山間部でも定着しているところです。
北陸では、生鮮食品の保存法や運搬の体制が整っていない時代に年取り魚を内陸へ届けるため、ブリは捕ってすぐ塩漬けに加工され、過酷な山道を運んでいたようです。
海のない地域で生の海魚を手にするには、並々ならぬ思いや努力があったのです。

今でも、丸々一本のブリは、まず尾を切り分け神棚にお供えしたあと、感謝と祈願を込めて家長が取り分け、家族全員で食べる習わしが残っています。
そもそもお節料理とは、新しい年の神様である歳神様へお供えした物のお下がりをいただく神聖な料理なのです。

東西を二分するサケとブリ

日本には、新しい年がよき一年となるよう様々な願いを込めて、縁起を担いだ食材でお料理を拵え、そのご利益を一緒に頂く風習があります。
南北に細長く伸びた列島の日本は、大きく東西に分かれて、様々な文化に違いが見受けられます。

お節料理に使われる代表的な魚は、東文化圏はサケ、西文化圏はブリに分かれます。
どちらの魚も塩蔵処理で長期保存がきき、冬に旬をむかえる美味しい大型の魚である点が共通しています。
そしてサケもブリも、成長と共に呼び名を変える縁起の良い出世魚です。
この東西を二分する食文化は、一体どこを境目としているのか気になるところです。

実は、地質学上、東北日本と西南日本の境目には「フォッサ・マグナ(大地溝帯)」と呼ばれる地帯があります。
このフォッサ・マグナに当たる新潟県や長野県を境にして、サケとブリの文化圏は東西に地域分布されているのです。
この境界地域では、サケとブリの食文化が混在している地域も見られます。

長野県の北部では、川にサケが遡上しよく捕れていたため、今でもサケが主流となっています。
江戸中期になり、長野県の中部や南部には、肥前高山を通って塩ブリが運ばれてきたことから、少しずつ馴染みの魚に変化が起きたようです。
ブリは初冬から春にかけて北から南へ下る回遊魚のため、その時期に西日本の各地で漁獲され定着していったと考えられます。

ブリの正月料理

特別な日に家族で囲む祝い膳は、ひとつひとつの料理に願いが込められており、代々受け継がれた家庭の味として受け継がれています。
冬のブリは脂がのった濃い味で、引き締まった身の食感と相まって絶品と言われています。

正月料理に登場するブリは、定番の味からご当地食材とのコラボまで様々なレパートリーがあります。
年越し用にブリを一本丸のまま用意する家庭、切り身をお刺身として食べる家庭や、塩焼きにする家庭、人参やじゃがいも、昆布などと一緒にブリのアラ煮にして大鍋で食べる家庭など、色々なブリの楽しみ方があるでしょう。
ここでは代表的な料理と、地域に根付いた郷土の味をいくつか紹介します。

ブリの照り焼き
ブリの代表的な正月料理と言えば、真っ先に照り焼きと答える人が多いかもしれません。家庭料理としても照り焼きは、ポピュラーなメニューのひとつです。
みりんや砂糖と醤油で甘辛く仕上げた照り焼きは、しっとりとしたブリの脂と旨味を活かしたメニューと言えます。
ブリ雑煮
雑煮にブリを入れる地域は多数あります。
長野県松本市では、醤油の澄まし汁に霜降りにしたブリと野菜を盛り付けて焼いた角餅を入れていただきます。
岡山県では、カツオと昆布の出汁に焼いたブリとホウレン草、紅白のカマボコを入れるのが特徴で、丸餅のお雑煮をいただきます。
福岡県の博多では焼きあご出汁を用い、塩処理したブリとカツオ菜、丸餅のお雑煮をいただきます。
ブリ大根
ブリのアラやカマを使った煮物で、骨まわりの脂の旨味を活かしたコクのある料理です。
味の染みやすい大根と一緒にブリを水から煮立て、醤油とみりんで味付けし、大根が飴色になったら出来上がりです。生姜を加えて、寒い時期に体の温まる美味しい料理となります。
かつては、保存食だった塩ブリを用いることが多かったようです。
かぶらずし
2㎝幅に輪切りにしたカブの間に切り込みを入れ、そこにブリを挟んで米麹に浸けた発酵食品です。
石川県の冬の特産品であるカブラを使い、同じく冬が旬のブリを合わせて作る、贅沢な料理とされています。石川県や富山県などで正月に食べられている祝い料理のひとつです。
出来上がりは、カブのシャキシャキ感とブリのコク、米麹の甘みが合わさった甘酸っぱいまろやかな味となります。

歴史に根付くブリの文化

冨士山と鰤

ブリの食文化が根付く西日本を中心とした地域では、祭事や神事において、神様へ捧げる神聖な供物としてブリを用いることがあります。
古くから地域の食生活や文化に携わり、重宝してきた魚ゆえ、今日に至るまでその扱いは粛々と受け継がれてきたのでしょう。

ブリを取り巻く文化をのぞいてみると、冬に得られる貴重なタンパク源として大きな存在であったブリは、長きにわたり親しみを込め、人々から大切にされてきたことがよくわかります。
各地に伝わるブリと関わりのある祭事や、ブリにまつわる文化を紹介します。

ブリと祭事

日本の各地方には、ブリを用いた神事が今も執り行われています。
日常の感謝や新たな生活に祈りを込め、その地に関わる神にお供えを用意し儀式が始まります。
ブリを用いた神事にはどのようなものがあるのでしょうか。代表的なものを見てみましょう。

富山県「鰤分け神事」

日本海側にあるブリの名漁場の一つ、富山県射水(いみず)郡下村にある加茂神社では、毎年正月元旦に新年慶賀祭が行われ、その中で無病息災祈願の「鰤分け神事」が営まれます。
この神事には、氏子の各地区から大きくて立派な塩ブリが神前に献納されます。
読み上げ役と呼ばれる氏子代表の男性は、ブリの尾をつかみ高く捧げ上げながら、奉納地区の名前を読み上げて、家内安全や無病息災を祈願します。
神事の後、奉納された塩ブリは氏子全戸に配分され、「神様からの授かりもの」として家族皆で焼いて食べるという、「福を頂く」風習が今も残っています。

佐賀県「鰤祭」

佐賀県佐賀市の佐嘉神社では、特殊神事として全国に知られる鰤祭が大晦日に営まれています。
佐嘉神社には佐賀藩主・鍋島直正と、その子直大(なおひろ)が祀られています。
鰤祭は「開運武威(ブリ)祭」と言われており、佐賀藩祖の鍋島直茂が、慶長の役の朝鮮出兵の帰りに船の甲板に躍り上がってきたブリを見て「武威(ブリ)が上がった、来るべき新年の瑞象である」と喜んだことに由来しています。

12月31日の神殿には十数本もの大きなブリが供えられ、宮司は来る年の豊漁や商売繁盛を願い秘め言葉を発し、先の尖った神矢を用いてブリに切れ目を入れる「調理の儀」を行います。
ブリは元旦に雑煮に調理され、「開運武威(ブリ)座」と称した一番祈願に参列した人々のお膳座りとして御神酒と共に振る舞われます。
また調理の儀に用いた神矢が当たる神くじも人気で、開運の矢を求めて多くの参拝者で賑わいます。

ブリに託される思い

ブリ文化圏では、その土地ならではの縁起担ぎやしきたりがあり、色々な風習が受け継がれています。
身を太らせ旬を迎えた一番上等なブリは、その立派ないで立ちに豊かさと命の尊さを感じさせます。
人々の間でブリは、贈る相手へ敬意を表すものとして扱われてきたのではないでしょうか。

金沢を中心とした北陸地方では、娘が結婚した年の暮れに、嫁ぎ先へ大きくて見事な1本のブリをお歳暮として贈る風習が残っています。
娘の幸せを思う親心から、ブリにちなみ旦那様の出世を願って贈られます。
一尾が10キロを越えるというブリは、半身をお嫁さんの実家へ贈り返す「半身返し」をして、両家それぞれが思いを馳せて交流風習です。

福岡県では「嫁御ぶり」と呼ばれる風習があります。
北陸地方とは異なり、お婿さんの両親からお嫁さんの実家へ、最初に訪れる初正月の挨拶としてブリが贈られます。
福岡を中心とした北九州地方に根付いている風習で、もらったお嫁さんの「嫁ぶりがいい」という褒め言葉にかけています。

長野県安曇野では、神棚の中央に恵比寿様、右に大黒様、左に田の神様を祀ります。
年末になるとブリの尾を串に差して、恵比寿様へ捧げる風習があります。
恵比寿様へブリの尾を捧げると、「羽振りがよくなる」「家が栄える」と言われ、一家の繁栄を願って執り行われてきた風習です。

日本人とブリの深い間柄

正月料理に登場する鰤

多くの日本人の考えとして、天地万物には神が宿っており、日々の生活は神々との共存だとの考えが、心の深いところに浸透しているのではないでしょうか。
古来から、神様へのお供え物には神聖な力が宿り、それを体内に取り込むことで神の力を得られると考えられてきました。

冬に脂のりが増すブリは、その美味しさと共に良質なタンパク源として、生きる上でとても貴重な食糧でした。
特に年末の歳神様を迎える時期に、年取り魚としてみごとな1本ブリを神前に奉納するのは自然なことだったでしょう。

日本近海でよく漁獲され、最も美味しい時期を迎える冬のブリは、贈答品としても敬意を表せる申し分のない高級品です。
また北陸や九州で見られる、息子や娘の結婚により結びつく両家が、ブリで喜びを共有する習わしは心温まる文化です。
各地域に根付いてきたブリにまつわる風習や文化、そして大切な祭事などを見ていくと、電話や手紙のやり取りができなくとも、ブリに託された思いで人々の交流が持てていたのだと察せられることでしょう。

人々が願うものは、「家族」「繁栄」「豊作豊漁」「感謝」など、生活に密着したささやかな幸せです。
それらと繋がる日本独自の風習を日本人とブリは築いてきました。
今年の冬も、日本のあちらこちらで縁起物のブリが伝統文化を華やかに繋いでいくことでしょう。

2024-02-16作成/2024-02-16更新]

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