寒ブリが通る名漁場
水温に敏感なブリは一定の海域に留まって生息する魚ではなく、海水温16~21℃を好んで季節に応じ生息海域を変えながら旅をする回遊魚です。
ブリの回遊ルートは日本列島を挟んで日本海側と太平洋側に分かれており、春に餌を追って北上したのち、冬に南下を始めます。
そのため、日本中で水揚げされるブリは、身近なスーパーの鮮魚コーナーに陳列されているとてもポピュラーな魚でしょう。
日本近海で獲れるブリですが、冬場になると「寒ブリ」と呼ばれる丸々とした立派なブリがお目見えします。
ブリは冬に旬を迎えます。ブリの身に脂がのって美味しさが増すのは11月から2月の寒い時期で、3月から5月の産卵を前に体に栄養を蓄えているからです。
実は、ブリの回遊ルートを分析していくと、ブリが冬場にどこで栄養補給をするのか、名漁場と呼ばれる産地での漁獲時期との関係、各産地が売り出すブランドブリの異なる味わいなど、寒ブリの秘話が明かされてきます。
また、よく太った寒ブリが獲れる名漁場と、豊富な水揚げ量を誇る漁場の違いもわかってきます。
大型魚の貫禄をもつ寒ブリの産地では、その海域にどのような天然の恵みや地形の特徴があるのかも合わせて紹介します。
ブリの回遊ルートを追ってみよう
日本近海に生息しているブリは、暖かな海流を好んで旅をする回遊魚です。
主に日本列島付近を回遊しており、北はロシアの北東部にあるカムチャッカ半島まで、南は九州の南南西に広がる東シナ海まで、東はハワイ島までがブリの生息海域です。
世界的に見てもブリの漁獲量の約90%は日本近海で漁獲されており、ブリは回遊ルート上、日本で多く捕食されてきた馴染みの深い魚と言えます。
ブリの泳ぐルートを追ってみると、寒ブリの身に脂がのる理由や、なぜ一年で最も冬が美味な時期なのか理解することができます。
寒ブリの美味しさのひみつと、ブリの回遊ルートをなぞりながら、どの都道府県が名漁場としてランクインされているのか見ていきましょう。
調査が進むブリの回遊ルート
ブリは回遊魚ですが、生まれて2年ほどは一定の海域で過ごします。ブリが生まれてから親ブリとなり、丸々と肥えた寒ブリとなるまでの成長段階を簡単に説明します。
まず、ブリの産卵は2月~3月に東シナ海南部で、4月~5月に九州近海で行われると推測されています。
産卵後、三日ほどで孵化した稚魚は、ホンダワラなどの流れ藻にくっついており、対馬海流にのって北上していきます。
稚魚は、浮遊している流れ藻に隠れて生活しているため、その臆病な性格を表すように「藻雑魚(モジャコ)」と呼ばれます。
初夏になり15㎝ぐらいまで成長すると「ワカシ」と呼ばれ、藻から離れて自ら海を泳ぐようになります。
ブリの成長速度は早く、約1年で30㎝ほどの体長になります。
「イナダ」と呼ばれる体長40㎝ほどに成長するまでは沿岸部で大きくなり、その後「ワラサ」と呼ばれる生後2年目までは、日本海の外洋へ出て成長します。
そして体が80㎝を超えるまで成熟した「ブリ」となり、回遊を始めるのです。
成魚となったブリは、夏になると北海道まで北上し、北の海で豊富な餌を食べて栄養を蓄えます。
そして海水温が下がり始める初冬になると、日本海側と太平洋側の沿岸を南下していきます。
ブリの生態には未だ謎が多く、現在でも回遊様式の把握をすべく調査研究がされています。
日本列島を挟んで二つのルートに分かれる、ブリの回遊ルートを追ってみましょう。
日本海側ルート
回遊パターンには「北部往復型」と「中・西部往復型」があることが把握されています。
ブリは春から夏にかけて北海道以南や津軽海峡付近まで北上し、メスは産卵のために、オスは精子を成熟させる栄養を蓄えるために、夏から秋にかけて荒食いを始めます。
日本海からの黒潮と太平洋からの親潮が混じりあうこの北の海には、栄養をたっぷりと含んだ餌が豊富にあるのです。
そして初冬になると、荒れた日本海を一気に南下し始め、故郷の海を目指してさらに南下し、産卵すると考えられています。
上記のルートを辿るブリは「北部往復型」と呼ばれています。
「中・西部往復型」と呼ばれる回遊パターンは、日本海、能登半島付近までしか北上せず、そこで荒食いをし、東シナ海へ南下する群れが確認されています。
太平洋側ルート
太平洋側のルートは、黒潮に乗って回遊します。パターンが複雑で幾つかのルートが確認されています。
現在把握されているルートは、遠州灘(静岡県から三重県の海域)から四国南西岸を回遊する群れ、また、紀伊水道(和歌山県、徳島県、兵庫県淡路島に囲まれた海域)から薩南(鹿児島県南西の海域)を回遊する群れ、また、豊後水道(大分県、四国、愛媛県に挟まれた海域)から薩南を回遊する群れ、といった小規模なルートが確認されています。
中には、薩南海域から太平洋側ルートをひたすら北上し、青森県北東と北海道南東付近の海域まで泳ぎ着くものもあります。
天然ブリは日本海産のものが有名ですが、近年、太平洋側で漁獲されるブリも、やや大型の傾向にあり人気があります。
回遊なし
実は、全てのブリが回遊する訳ではなく、九州など暖かい南の海から移動をしないで留まる「瀬付きブリ」と呼ばれるものもいます。
瀬付きになったブリは身が痩せており、回遊魚と比べて側線部が黄みの強い帯模様をしているため「キブリ」と呼ばれ差別化されています。
冬にブリが美味しくなる理由
「寒ブリ」の呼び名通り、寒い冬の季節にブリは旬を迎えます。ブリの旬が冬である理由を説明しておきましょう。
成魚となったブリは暖流にのって回遊を始め、餌の豊富な北海道周辺で過ごします。
命をかけた大仕事を前に、北の海でイカやアジ、イワシ、サンマなどを中心に、脂と栄養がたっぷりと詰まった餌を沢山食べます。
産卵や越冬に備えて栄養を蓄えつつ身を太らせていく「荒食い」という行動をとるのです。
荒食いをして肥えたブリは、暖かな南の海を目指し、ゆっくり南下していきます。
そうして11月~1月の南下中に漁獲したブリは、最も脂がのり身も丸々と肥えているという訳なのです。
ブリは通常、背身は筋肉質で歯ごたえがあり、刺身にしてもあっさりとした味わいが特徴で、腹身はトロと呼ばれる脂のねっとりとした濃厚な旨味を味わうことができます。
極上の寒ブリは、背中の方まで脂がのり、腹側の身は口へ頬張ると溶けてしまいそうなほどの脂のりを味わえる、絶品グルメと呼ぶに相応しい美味しさで定評があります。
一年で最も脂がのり、大きく太った上に弾力のある身質の寒ブリは、至極の美味しさなのです。
ブリの名漁場と競うブランドブリ
ブリの回遊ルートを追ってみると、北海道以南から九州まで日本列島をぐるりと巡り、日本各地の近海にブリが生息していることがわかりました。
しかし、どこで獲れるブリも同じかというとそうではなく、獲れる場所や季節によってブリの身質や美味しさは変化します。
例えば、ブリが南下する際に海水温はとても重要なキーとなります。ブリの活性が高くなる水温は16℃と言われており、ブリの回遊ルートと美味しいブリが水揚げされる漁場には密接な理由があるからです。
また、潮の流れが早い海では、身が引き締まったブリが獲れると言われています。海水の溶存酸素量も多く、ブリの活性が上がるからです。
海の恵みに溢れ、良質なブリが育まれる漁場はどこでしょうか。
最も脂がのって美味しくなる時期にブリが快適に回遊してくる漁場はどこでしょうか。
名漁場と呼ばれる産地をピックアップすると共に、各地でブランド化されたご当地の美味なブリを紹介します。
日本三大ブリ漁場
「日本三大ブリ漁場」と呼ばれるブリの名漁場をご存知でしょうか。
北海道の海で栄養豊富な餌をたっぷりと食べて脂が最大限のった状態のブリは、11月下旬になると、産卵のために暖かい海を目指して南下する途中、各漁場に辿り着きます。
富山県「氷見市」、京都府「伊根町」、長崎県「五島列島」は、環境に恵まれた三大ブリ漁場と呼ばれ、海流に乗って丸々と太った美味しい時期のブリが立ち寄る名漁場です。
現在は海水温の上昇からブリの漁獲場所に変化が現れていますが、ブリ漁の盛んな現地に伝わるそれぞれの漁場の特徴を紹介します。
富山県「氷見市」
氷見は、富山県の北西部に位置する「寒ブリの港」と呼ばれる漁場です。
富山湾は、大小の河川が運んだ栄養が豊富に流れ込み、魚の餌となるプランクトンが多いため、多くの海産資源が集う場所です。
氷見は能登半島の出っ張りにより、天然のいけすと呼ばれる地の利が活きた地形をしており、南下途中のブリはこの湾に入り込みます。
富山湾は、北から南下してくるよく太ったブリを受け皿のように囲い込みます。なかでも氷見は、大陸棚が広がる地形の利点から県内一の魚獲量を誇る漁場となっています。
また、氷見では天候も強い味方となっているようです。
12月~1月にかけて雪が降る頃、「鰤起こし」と呼ばれる雷が地響きのように鳴り轟きます。
この鰤起こしの後は、とても強い風と共に雪が降る荒天となってブリの南下を妨げるため、たくさんのブリを漁獲しやすいと言われています。
京都府「伊根町」
丹後半島の北東部に位置する伊根町は「伊根の舟屋」として有名な町で、古くから名漁場として名を馳せていました。
舟屋とは、住居の一階部分が海、二階部分が住居となっている独特な建造物のことです。
伊根町は日本で一番海に近い町とも言われ、伊根湾の周囲5㎞に亘って230軒もの舟屋が建ち並び、今では国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定された歴史的な町なのです。
伊根湾は青島が浮かぶ影響で湾口が狭いのが特徴で、水深が非常に深く潮の干満差は年間50cm程度という波の穏やかな良い漁場です。
12月~2月にかけて伊根湾で獲れたブリは「丹後のブリ」と呼ばれ、良質な脂がのっていながらも、脂っこくなく上品な味わいが堪能できるブリとして評価されています。
江戸時代の物産図会である日本山海名産図会に「伊根のブリは上品」との記載があり、約220年も昔から味に定評があったことが伺えます。
そして、伊根町はブリしゃぶ発祥の地として有名で、各店でブリを熟知した料理人が美味しいブリしゃぶを提供しています。
長崎県「五島列島」
長崎県の海岸線延長距離は4,175㎞もあり、北海道に次いで僅差で2位、しかも対面積比では北海道を抜き全国1位であることから、日本で一番海洋性が高い県だということが分かります。
九州最西の長崎市より、さらに西へ100㎞も離れた五島列島は、東シナ海の真ん中に位置する自然豊かな島です。
「日本一きれいな浜辺」と言われている西海国立公園の島、五島列島はまさにお魚の宝庫と呼べる名漁場です。
ブリが生息している最西海域でもあり、ブリの貴重な産卵場所でもあります。
五島列島は、世界最大級の流れである黒潮から分岐した対馬海流が流れ込んでおり、そのため多くの魚が流れに乗ってやってきます。
魚天国の五島列島は、ブリの餌となる小魚が豊富で、活きのよいブリが集まってくるのです。
五島列島では12月~1月頃が旬となり、水揚げされる天然のブリは、身が引き締まっておりプリプリとした肉質を楽しむことができます。
また地元では、3月~4月頃に獲れるブリを「彼岸ブリ」と呼び、産卵直前となる春の彼岸ブリは腹にまこ(卵)を抱え、十分な脂のりがあって美味しいのだそうです。
ブリの水揚げ量ランキング
天然ブリの水揚げ量は、年によってブリの回遊パターンが異なるため、上位へランキングする都道府県の入れ替わりは激しくなっています。
回遊パターンの変化は、温度、風、海流、降水量など気候変動が影響を与えているようです。
天然ブリの水揚げ量上位の都道府県を、3年間分見ていきましょう。
農林水産省が発表した統計によると、下記の通りです。
・平成27年
1位 長崎県(15,651t)
2位 石川県(13,859t)
3位 島根県(11,204t)
全国総漁獲量 123,188t
・平成28年
1位 島根県(12,630t)
2位 石川県(11,939t)
3位 北海道(11,882t)
全国総漁獲量 106,756t
・平成29年
1位 長崎県(18,197t)
2位 島根県(13,015t)
3位 岩手県(10,410t)
全国総漁獲量 117,761t
ランキングを見ていくと、ふと面白いことに気づきます。
寒ブリで有名な北陸地方が必ずしも水揚げ量上位を占めている訳ではないという点です。
とくに昨今、海水温の上昇や環境の変化が影響しているのか、ブリの水揚げ場所に変化が見られます。
ブリの適水温は17℃前後と言われており、居心地のよい方へ移動するため、以前はそれほど漁獲量が多くなかった北海道付近の海域で、ブリが多量に水揚げされるようになりました。
また富山湾は北アルプスからの雪解け水が流れ込み、プランクトンが多く栄養豊富な海として「天然のいけす」と呼ばれていますが、富山湾沖合の海水温度が上昇しているためか、能登半島より北側をブリが回遊し、いけすに引っかからなくなってきている状況もあるようです。
上位3位には入っていませんが、千葉県や三重県も上位へランクインする都道府県です。唯一、太平洋側で水揚げ量上位の千葉県は、津軽海峡を越えて東ルートを回遊してきたブリがよく獲れる名漁場です。海水温の上昇によってブリの回遊ルートが変わることは、天然魚を相手にしている漁業関係者にとって誠に切実な状況だと言わざるを得ません。
集客力をもつブランドブリ
天然ブリは水揚げされる場所や時期によって、体の発達具合や脂や筋肉の付き方に少しずつ変化が表れます。
季節回遊魚の天然ブリは、捕獲地ならではの魅力に付加価値が加わり、それぞれの地域で独自のブランドを立ち上げて差別化を図っています。
ブランドブリは、ブランドの名前に恥じない高い審査基準を設け、消費者の目にとまるようなブリの特徴を前面に押し出し、美味しさとこだわりをアピールしています。
また、ご当地の味として選抜されるブランドブリには、ひと目でわかるようにオリジナルのロゴが貼られ、その品質を保証しています。
特に激戦区となる各漁場では、天然ブリの差別化をどのように打ち出しているのでしょうか。
日本海でライバルとなっているブランドブリを例に、比較をしてみました。
新潟県「佐渡一番寒ブリ」
平成18年、「佐渡一番寒ブリ」はブリの季節の到来を表すブランドとして立ち上がりました。
寒ブリの水揚げは佐渡から始まります。
日本海の荒波の中を脂と旨みを身に付けた美味しいブリは11月~1月にかけて南下し、佐渡湾内へと泳いできます。
佐渡両津湾内には大型定置網が仕掛けられ、身の締まった元気なブリが大量に水揚げされます。
水揚げされたブリは船上で直ぐに血抜きをし「海洋深層水氷」で生け締めを行い、鮮度を保ちます。
佐渡のブリは身が固く締まっていて、脂がとろける名品です。
重量10㎏以上のもので、脂質15%以上のブリを「佐渡一番寒ブリ」と定義づけ、佐渡のフードブランドとしてPRを進めています。
富山県「ひみ寒ブリ」
ブリの最高峰との呼び名の高い「ひみ寒ブリ」は、富山の冬の味覚として全国に知られています。
2011年に商標登録をされた「ひみ寒ブリ」は、氷見魚ブランド対策協議会の判定委員会から「寒ブリ宣言」が出された約2ヶ月のシーズン中に、富山湾の定置網で漁獲されたブリに限られます。
ブランドブリとなるには3つの条件があり、氷見魚市場で競り落とされた、形と質のよい、6kg以上のものが選別されます。
水揚げされたブリは、船上で氷漬けの生け締め手法によって締められ、鮮度を保つようすぐに処理されます。
この生け締め手法は「沖氷」と呼ばれ、ダイレクトにブリの品質に繋がる高度な技が光っています。
また氷見では、定置網と漁港の距離が近く、漁港から30分以内の距離に定置網を設置しています。そのため、とにかく鮮度抜群のブリが美味しさを損なうことなく魚市場に入ってくるのです。
ひみ寒ブリは確固たるブランド力を持っており、選び抜かれたブリには販売証明書を付けて全国へ発送されています。
石川県「天然能登寒ブリ」
石川県珠洲市から七尾市の富山湾に面した内海へ定置網を張っており、氷見市の北側に位置し、「ひみ寒ブリ」と同じ海域となります。
定置網と漁港の距離は1~2㎞と近く、漁獲後は冷たい海水を用いて鮮度保持に努めています。
江戸時代(1603年~1868年)、能登の寒ブリは「御用鰤」として加賀藩へ献上されていたほど貴重な品でした。
2006年より商標登録が成され、11月から2月にかけて漁獲される7㎏以上の上質なブリを「天然能登寒ブリ」と定義しています。
その稀少さは、2017年調べでは100匹中13匹のみだったという厳しい審査基準で厳選されています。
この時期の寒ブリの脂のりは、腹身の脂肪含有量が30%を越えるものもあり、醤油を弾くほどの凄さだといいます。
脂の旨味と引き締まった身質をさっぱりとした後口で堪能できると好評です。
日本と寒ブリの巡り合わせ
ブリは日本列島をぐるりと囲むかのように、九州から北海道まで日本近海を暖流にのって回遊しています。
東シナ海で誕生したブリの幼魚が回遊を始めるのは、成魚となった初夏です。
親ブリとなる成魚は春に繁殖期を控え、体を成熟させるため、また越冬や産卵にむけ栄養を蓄えようと北上し、餌の豊富な北の海で荒食いを始めます。
寒くなる頃に日本列島沿いを南下するブリは、丸々と肥えて脂のりがピークを迎え、寒ブリと呼ばれる冬の味覚食材となります。
旬をむかえた寒ブリは、料理人を唸らせるほどの良質な脂をもち、至極の味わいを誇ります。
地球温暖化の影響を受け、海水温の上昇等の理由で回遊ルートや漁獲期に変動があらわれていますが、名漁場でブランド化された寒ブリは、日本が世界に誇れる和の魚と言えるでしょう。
回遊ルートによるブリの特徴の違いは各地でブランド化され、地域の水産業を盛り上げています。
一般的に潮流の激しい日本海側で漁獲された寒ブリは、北の海で餌をたらふく食べているため、脂のりが豊かで歯ごたえのある身質が特徴です。
太平洋側で漁獲される寒ブリは、適度な脂のりで赤身と脂のバランスがよく、潮流の穏やかな海域を泳いてきたため、弾力がありながら程よいやわらかさをもつ身質をしています。
寒ブリの名漁場と名高い「富山県」「京都府」「長崎県」地域は、北の海から南下中の美味なる寒ブリが通る、季節と海域に恵まれたブリの聖地となっています。
ブリの歴史を紡いできた優良な漁場は、丸々と太った美味しい時期のブリが立ち寄る「日本三大ブリ漁場」として君臨しています。
一方、ブリ水揚げ量の豊富な都道府県は、年間を通して日本列島を回遊しているブリを都度漁獲できるため、比較的県内でのブリ消費量が多い傾向のようです。
ブリの回遊ルートを追って日本全国をぐるりと巡れば、産地によって絶妙な味の違いを楽しめるかもしれません。
古来、日本人に好まれ、貴重な品として重宝され食べられてきた寒ブリは、自然の恵みでありながら各漁業関係者によりその品質が保証され、私たちの食卓へと届けられています。
目の前の寒ブリがどんな回遊ルートを辿り、どこの漁場で水揚げされたのか、想像しながら食すのも一興ではないでしょうか。
[2024-02-16作成/2024-10-11更新]
(c)ふるさと産直村