親しみ深い国産海老の世界
海に囲まれた日本は、世界でも4位に上がる海洋国です。
その上、北は北海道から南は沖縄まで、縦長い列島ゆえの寒暖の差があり、その地ならではの海の恵を受けて生活してきました。
水産資源のひとつであるエビの歴史を遡れば、縄文時代からエビを捕獲し食べてきたことがわかっています。
日本各地の海域や河川には、固い殻に覆われた大きなエビから透き通った儚さのある小さなエビまで、様々なタイプが生息しています。
今では希少となってきた国産天然海老ですが、江戸時代には大量に水揚げされており、庶民の食卓にも登場するようになりました。
鮮やかな朱赤色をしたその姿は日本伝統の和食においても目を引く彩りとなり、甘味を感じるうま味成分が豊富な味わいは、忘れられない美味しい食材でもあります。
輸入品がメインとなった現在でも、日本各地では多様なエビが水揚げされ、私達の食生活にかかせない存在になっています。
生活と密着したエビの産地では、バラエティー豊かなエビ料理が受け継がれ、そこにしかない特別な美味しい食材として食べられています。
メジャーな種類から地元の人しか知らないようなレアな種類まで、魅力あふれるエビを追いかけ、国産海老の世界を身近に感じてみましょう。
日本人とエビの関係
日本におけるエビの存在を文献や自体から感じ取ってみるのも一興です。
食べ慣れた今でこそ美味しく見えますが、節足動物のエビは脚が10本あり、鎧のような殻に覆われています。そのような姿は人々の目にどう映っていたのでしょうか。
エビに当てられた漢字を見ると、人々の巡る思いが面白く読み取れます。
ご存じの通り、日本ではエビは縁起物として用いられます。
エビの姿から長寿を連想し、お正月や子どもの節句、敬老の日などお祝いのお膳にも登場します。
日本で獲れるエビの存在をただの食材ではなく、意味のある存在にした日本人の心にふれることができるでしょう。
文献に登場するエビ
エビに関する文献から、エビと日本人の歴史を追ってみましょう。
古くは733年(天平5年)成立の「出雲国風土記」において、海に在る雑物のひとつに「縞鰕」があげられています。
当時食されていた「鰕」とは、現代でいう「何エビ」なのか種類は確認できていませんが、大きなエビという意味をもつ縞鰕は、後に「イセエビ」と呼ばれる種類だったのではないかと推測されています。
また当時の漁師の生活を「板子一枚下は地獄」と言い表し、波の荒い日本海へ命がけで漁に繰り出していた様子も記されています。
島根県という海の幸に恵まれた地域に、その頃からエビが生活に関わっていたことが伺い知れます。
「蝦」という字は、もともと魚偏で「鰕」という字体で中国から伝わってきました。しかし魚ではないことから、後に虫偏へと変更されたようです。
奈良の平城京跡からは、荷札などに用いられた木簡が出土しており、そこには「海老」の字が使われています。立派な髭と腰の曲がった姿から翁を連想していたと言われています。
文字の読み書きが一般的となってきた江戸時代に入り、「蛯」の字が普及していきました。
このように、エビには日本で生まれた漢字(国字)が多く存在するのも面白いことです。
特別な意味を持つようになったエビ
伊勢で獲れるイセエビや福井の越前エビ、鹿児島の大クルマエビなど、立派なエビは幕府や宮中への献上品として納められていました。
特に「鎌倉蝦(かまくらえび)」や「具足海老(ぐそくえび)」と呼ばれていた「イセエビ」は、神聖で正月飾りには欠かせない「神饌」としても用いられてきました。
イセエビは、今でも伊勢神宮の神饌として、三重県の伊勢海老漁解禁日10月1日に網掛けされた初物を伊勢神宮へ献納しています。
室町時代(1336年~1573年)以降になると、武家の婚礼の宴にイセエビは欠かせない縁起物として、祝宴と結びつきの深い食材でした。
なぜエビが縁起物として重宝される海産物であったのか、それは次の理由が挙げられます。 ひとつは長い髭と腰の曲がった姿から、長寿の象徴とされてきたことです。
二つ目に、「緋色」と呼ばれる赤身をもっていることです。
日本の国旗である日の丸の赤に見るように、緋色は太陽の意味を持っています。また、紅白幕は出生と死を意味しており、緋色は命を表す色でもあります。
三つ目は、見た目です。とくに大きなエビに言えることですが、甲冑のような硬い殻をもち、太くて長い触角を振りかざす姿が勇敢な武士のようだと、立派な容姿が武家に好まれていたとの理由が挙げられています。
北海道から沖縄まで「日本のエビ」
エビは、環境の厳しい寒流の海域にも温暖な気候の海域にも生息している全国区の魚介類です。また、海水から川や淡水まで、幅広く生息しています。
大きさも獲れる時期も種類により様々で、個性豊かな見た目や味わいの違いを楽しませてくれる食材でもあります。
2020年の国内エビ類漁獲量ランキングを見ると、合計漁獲量の日本一は佐賀県で、次に北海道、兵庫県、石川県と続いています。
2017年に国内で獲れた約1万7500tのエビのうち、天然エビは約1万6100t、養殖エビは約1400tを占めていることがわかりました。
国産海老は天然エビのみだけでなく、誇るべき養殖技術で育った安心安全な国産養殖エビも地域に密着しています。
日本近海で漁獲される天然エビの種類をピックアップしました。エビ種ごとの個性も合わせて見ていきましょう。
日本産天然エビの紹介
海に囲まれた日本列島では、古今東西多くの種類のエビが各地で漁獲されてきました。
現在食べられているエビのほとんどは輸入に頼っており、国内での漁獲量は少なくなっていますが、引く手あまたな美味しい天然の海老が存在しています。
メジャーなエビだけでなく、地元民しか知らない聞いたことも食べたこともないようなエビまで、知る人ぞ知るレアなエビ種などをご紹介します。
- ホッコクアカエビ(北国赤海老)
- 通称「甘エビ」という呼び名で広く知られています。
身はねっとりとして柔らかな肉質で、甘味のある体長12㎝ほどの小さなエビです。薄い紅色の殻は柔らかく、小振りながら頭にはえびみそが詰まっています。
生食で味わうのがお勧めで、寿司ダネ、刺身、塩辛などに使われています。よい出汁がでるので味噌汁の具や出汁としても用いられています。
- トヤマエビ(富山海老)
- 体長20㎝ほどの大型のえびです。
漁獲量は北海道がトップですが、最初に採捕されたのが富山湾だったため、この名前がつきました。漁は秋から春にかけて行われ、鮮度が命のトヤマエビの旬の時期となります。
透明感のある薄い朱色で、頭が大きく、身は濃厚な甘味をもち食味がよく、高級寿司ダネとして出回っています。
漁獲量減少の中トヤマエビは「ボタンエビ」として流通しています。しかし、市場で標準和名「ボタンエビ」と呼ばれる種類もありますが、別物になります。
- ホッカイエビ(北海海老)
- 市場では通称「ホッカイシマエビ」と呼ばれ、体長8~13㎝ほどの小振りなエビです。
北海道のサロマ湖と能取湖、野付湾が一大漁場として有名で、資源保護のため漁業規制が設けられており、漁獲期間も短くとても貴重なエビです。
生きている時は緑と褐色の縞模様ですが、茹でると鮮やかな朱色が浮き出るので、現地では「海のルビー」と呼ばれています。
生食より茹でたものは甘味が増して風味が豊かなため、ほとんど茹でたものが流通しています。
水揚げされたら直ぐに浜茹でされるのが一般的で、「こんなに甘いエビがあるのか」と驚くほどの甘味と弾力のある身をもつ高級エビです。
- ヒゴロモエビ(緋衣海老)
- 北海道の羅臼地方や青森県を中心に、千葉県以北の寒い海域に生息しています。
大変漁獲量が少なく、漁場によっては漁獲時期も短期間に定められているため、希少価値のエビです。
「幻のエビ」と呼ばれ、築地市場などに入荷すると1㎏あたり1万円前後と高値で取引され、エビ専門店や高級寿司店でしかお目にかかることのないレアなエビと言えます。
体長15㎝ほどで、水揚げ後時間が経過すると体色がブドウのように紫色へ変化することから通称「ブドウエビ」とも呼ばれています。
ねっとりとした甘味のある濃厚な味わいはボタンエビを超える絶品と、食通を唸らせる味わいです。
また、エメラルドグリーン色のプチプチとした卵は粒が大きく、キャビアより美味しいと高く評価されています。
- クロザコエビ(黒雑魚海老)
- 日本海側でしか漁獲できず、地元民が美味しさに太鼓判を押すエビです。体長12㎝ほどの大きさで、秋から春にかけて漁獲されます。
別名、ガスエビ、ガサエビ、モサエビ、ドロエビなどと呼ばれ、見た目は猛者のように武骨で明るい肌色をしており、見栄えが今一つと言われていますが、もちもちとした身の甘味はとろけるほどだとか。
北陸地方や鳥取県で、ご当地食材として売り出しています。
- クルマエビ(車海老)
- 日本近海に生息する貴重な食用種代表のエビです。日本のエビ養殖業の要となったことでも有名な品種です。
名前の由来は、体に入った縞模様が腹を丸めた際、車輪のように見えることからこの名がつきました。
体長は平均して15㎝ほどですが、中には30㎝に達するものもあり、市場ではサイズごとにクルマエビの呼び名を変えているため、出世エビと言われています。
クルマエビは旨味と甘味のバランスがよく、食味のよい品種として古くから日本人に愛されてきたエビ種です。
江戸前の寿司ダネや天ぷらには欠かすことのできない食材で、エビの中では高級食材として、料亭などで用いられています。
- サクラエビ(桜海老)
- 体長4㎝前後の非常に小さなエビで、全体に透明感のある赤色で体に濃い赤色の斑点をもっています。小さなエビなので下ごしらえが不要で、丸ごと美味しく食べられます。
国内では東京湾や相模灘にも生息していますが、漁業の許可を認められているのは静岡県だけなので、国内の水揚げは100%静岡県駿河湾産です。
3月中旬~6月上旬の春漁と、10月下旬~12月下旬の秋漁と年に2回の漁期が定められています。
近年、台湾からの輸入サクラエビも見かけますが、甘味と旨味の濃さは駿河湾産に軍配が上がっています。
- シラエビ(白海老)
- 標準和名はシラエビですが、一般的にはシロエビと呼ばれているオキエビ科のエビです。
体長は6㎝ほどと小粒なエビで、水揚げされた直後は透明感のある淡いピンク色をしており、時間と共に白く変化していきます。
シラエビは、静岡県駿河湾や新潟県糸魚川沖などでも漁獲されますが、漁業が成り立つ程の漁獲量は富山湾のみです。
富山湾特有の「あいがめ」と呼ばれる海底谷付近に生息し、4月~11月にかけて漁獲されています。一大漁場である富山県では「富山湾の宝石」と称しブランド化しています。
地元では「ヒラタエビ」や「ベッコウエビ」などの呼び名で親しまれ、小振りなサイズを活かしてかき揚げにしたり、出汁に使用されたりしています。
- イセエビ(伊勢海老)
- 体長20~30㎝ほどの大型のエビで、立派な髭をもち、頑丈な殻におおわれたエビです。
大きな姿に反して可食部は少ないですが、刺身でも焼いてもしっかりとした食感と魅惑の旨味を堪能できます。
古くから縁起物として祝宴の席や神社への献納品に用いられ、伊勢神宮では「神饌」として毎年初物が納められています。
房総半島以南から九州近海までの暖かな海域に生息しており、三重県が漁獲量トップを誇ります。
産卵期の5~8月は資源保護のため、どの地域でも禁漁期間としており、秋から春にかけての漁期に出回ります。
伊勢地方で多く獲れることから伊勢海老と呼ばれるようになった説や、硬い殻が武士の甲冑を彷彿とさせ「いせい(威勢)がいい海老」から伊勢海老となった説など、諸説あります。
- ウチワエビ(団扇海老)
- 体長20㎝前後の大型のエビで、平べったくまるで団扇のような形状をしていることからこの名がつきました。
殻が硬く、平たいので身が少なそうな印象ですが、実は身詰まりがよく、プリっとした食感と甘味のある味わいは大型エビの代表イセエビより美味しいと評価する人も。
九州から島根県付近の主に西日本近海で水揚げされており、温暖な海域に生息しています。
資源保護のため漁獲期間を定めており、一大漁場である長崎県五島列島では10月~11月の2ヶ月間、宮崎県や島根県では春から夏にかけてと、地域によって漁獲時期が異なります。
そのため、市場へ出回る数も少ないレアなエビです。
漁獲量が少ないため、主に地元の食材として消費されていましたが、その希少価値性と美味しさから、高級食材として注目されています。
宮崎県では「パッチンエビ」や「パタエビ」の呼び名で知られており、他にも「ハタキエビ」「パチパチエビ」など多くの呼び名をもっています。
日本が誇る養殖エビ
天然エビだけでは需要に追い付かなくなるほどに日本のエビ人気は加速し続けています。
現在、私たちの食卓にあがるエビの90%は輸入に頼っており、国産エビの養殖で安定した供給ができるよう事業の拡大を目指しています。
日本では、ブラックタイガー、バナメイエビの2種が主に養殖されています。
じつは、エビ養殖の第一人者は日本人です。昭和の水産学者である山口県出身の藤永元作氏は、クルマエビの生態を解明し、卵から稚エビを育てる人工孵化の道筋を作った功績者です。
クルマエビ養殖発祥の地である山口県秋穂では、素手でクルマエビを捕まえる「エビ狩り世界選手権大会」を開催し、地元を盛り上げています。
養殖クルマエビの国内生産量トップは、年間を通して海水温が安定している沖縄県です。
豊富なミネラル成分を含んだ海水で育った沖縄産の養殖クルマエビは、甘みが強く安心安全な品質が人気を集めています。
また高知県の新沿岸陸上養殖株式会社では、県内で生まれ育った親エビからふ化させた稚エビを親エビとなるまで育て、その親エビが産んだ卵をふ化させ再び親エビとする完全養殖を成功させました。高知県産まれ高知県育ちの国産バナメイエビが養殖されています。
高知県ではこの養殖バナメイエビを国内唯一の完全養殖の国産海老である証として、和名の「シロアシエビ」と呼び、差別化を図っています。
エビ名産地ならではのご当地料理
全国各地のエビ名産地では、特産品の特徴を活かした名物エビ料理が人気を得ています。
伝統ある郷土料理や高級料理、安くて美味しい庶民的な料理など、地で獲れる美味しいエビがふんだんに使われたエビグルメです。
エビの旨味や効果効能を上手に活かしたメニューからは、生活に溶け込んだ親しみ深い食材としてのエビを感じることができます。
地元で愛されるご当地ならではのエビグルメを追って、日本横断をしていきましょう。
えびそば(北海道)
北海道は、日本一の甘エビ漁獲量を誇り、甘エビを使った料理がたくさんあります。
えびそばは、濃厚な甘えびの旨味を楽しめる北海道で人気のラーメンです。
札幌市発祥で、北海道名産の甘えびをベースに出汁を取ったコク深いスープが人気の秘密です。
甘エビの頭部を長時間煮込み、エビの旨味が存分に凝縮したスープは、麺に絡みつき混然一体となった至福の一杯です。
店舗によって、塩味、味噌味、醤油味などバリエーションも豊かで、エビがもつ濃い旨味をガツンと堪能できるラーメンです。
江戸前寿司(東京都)
江戸前寿司は、東京湾で獲れた魚を使って味、色彩、季節等を楽しめるよう握ったお寿司です。
江戸前とは東京湾そのものやで獲れた魚介類を指しており、江戸前寿司は江戸時代に誕生した東京の郷土料理です。
クルマエビの握りは、江戸前寿司を代表とする寿司ダネのひとつです。
江戸の寿司職人は、シバエビのおぼろ(えびそぼろ)を作り、酢で〆たクルマエビの握りに挟んで握っていたそうです。
丁寧に手間暇かけて仕事された甘い海老おぼろは江戸前寿司の特徴であり、欠かせないアイテムです。
サクラエビのかき揚げ(静岡県)
静岡県駿河湾は、サクラエビの名漁場です。生のサクラエビが食べられる唯一の地として有名です。
しかしご当地鉄板の人気メニューは、サクラエビのかき揚げです。見た目にも華やかなかき揚げは、サクラエビの甘さと香ばしさが抜群です。
桜の花びらのようなピンク色のサクラエビをたっぷり使ってサクッと揚げたかき揚げは、丼や蕎麦にトッピングしても食べられます。
サクラエビのかき揚げは、「食べてみたい!食べさせたい!ふるさとの味」として農林水産省選定の郷土料理百選で選ばれた静岡県の郷土料理です。
えび豆(滋賀県)
えび豆は、大豆とスジエビを醤油や砂糖で甘辛く炊いた滋賀県の郷土料理です。
琵琶湖ではスジエビという淡水の川エビが獲れます。秋に旬を迎えるスジエビは小柄で殻が柔らかいため、そのまま調理に使われます。
また滋賀県は大豆栽培が盛んなこともあり、えび豆は、家庭料理としてだけでなく、正月のおせち料理やお祝いの席にも登場する県を代表する味として食べられています。
天むす(三重県・愛知県)
クルマエビの天ぷらを切っておむすびの中に入れた天むすは、三重県津市の天ぷら店「千寿」で生まれた名物です。
忙しく働く夫に栄養のあるものを食べてもらいたいという愛情から誕生した天むすは、店のまかない飯となり、看板メニューへと進展していきました。
千寿の天むすに入っているえび天は、おむすびの中に隠れるように握られており、シンプルな塩味が特徴です。
一方、愛知県名古屋市の「名古屋めし」として知名度のある天むすは、おむすびからえび天が飛び出しており、醤油ベースの味付けとなっています。
「千寿」が名古屋へ暖簾分けをして、少しずつ名古屋めしの地位を確立していきました。
愛知県はクルマエビの漁獲量日本一を誇っており、クルマエビを県の魚に指定しています。
えびめし(岡山県)
岡山市発祥のご当地メニューえびめしは、真っ黒な見た目のインパクトがある炒飯です。
エビとご飯をカラメルやカレー、ケチャップなどを配合した企業秘密の「えびめしソース」で炒めてあり、見た目は黒くてずっしりと重そうな印象です。
食べるとクセになる香ばしさがあり、甘辛くて以外にマイルドです。
錦糸卵を炒め飯の上にトッピングし、キャベツの千切りを添えるのが主流です。
岡山えびめしの元祖は、東京渋谷のカレー名店「いんでいら」で出されるメニューのひとつです。
そこで修業した料理人が郷里に持ち帰り、アレンジしたのが岡山B級グルメえびめしとなりました。
車えびのしゃぶしゃぶ(大分県)
しゃぶしゃぶは、新鮮なクルマエビの美味しさを引き出した新しい食べ方です。
トビウオから取ったあご出汁は、クルマエビの旨味を最大限に引き出してくれます。
あご出汁の中で腹を開いた生のクルマエビの身をさっと泳がせると、食感がプリプリとし、身が引き締まって甘味が増します。エビの風味が口いっぱいに広がり魅惑の美味しさを楽しめるグルメです。
豊後水道の豊かな海域に恵まれた大分県は、クルマエビの養殖地として有名です。
大分県の国東半島は世界農業遺産の認定地域となっており、東国東群姫島の車エビ養殖場はそのような自然豊かな環境下で育った甘くて美味しい車えびに定評があります。
ハトシ(長崎県)
ハトシは中国語で、エビ「蝦(ハー)」食パン「多士(トーシー)」を意味しています。
エビのすり身を食パンで挟んで油で揚げたもので、明治の頃に清国から伝わり、長崎の卓袱料理として食べられていました。
サクッとした食感とふんわりプリッとしたすり身のハーモニーが特徴の、長崎の味として親しまれています。現在では学校給食にも登場する人気メニューです。
愛され続ける国産海老
エビは海のみならず、日本中の川や湖、沼にも生息しており、古くから貴重なたんぱく源としてエビが食べられてきたという歴史は、縄文時代まで遡ります。
江戸時代に入り、東京湾でクルマエビや芝エビが多く獲れるようになったことで、エビの魅力が全国に広がっていきました。
よく知られていることに日本では、エビはその特徴的な見た目の長い髭や曲がった腰から長寿の象徴としても愛される存在です。
特に伊勢海老は、立派な体のつくりや美しい緋色からおめでたい席に用いられるなど高価な存在となりました。
今や私たちの食卓に欠かせない食材のエビですが、そのほとんどは輸入品に頼っています。
それでも日本には、エビ養殖のパイオニアによるエビ養殖のノウハウがあり、国産の養殖エビで品質や安全性の高い美味しい国産海老を食べることができています。
また、地元民しか知らない個性豊かな種類の天然のエビが漁獲されていることがわかりました。
漁獲量が少なく鮮度を保つことの難しいエビは全国に流通していないため、地元ならではのグルメとして守られてきたものもあります。
我が国の大切な資源を守りながら、国産のエビに愛着をもち身近な食材として美味しく食べられることに幸せを感じます。
エビの仲間は多種あり、個性に合わせた調理法でエビ料理が増えていく優秀な食材です。
また、味付けの幅がひろい食材ゆえにバラエティーが豊かで、多くの郷土料理が存在する面白い食材です。
栄養豊富で甘みや旨みが強い国産海老は、特別な食事としてだけでなく、生活に馴染み深い美味しい献立となり、小さな子どもからご年配の方までに愛されています。
国産海老は日本の誇りとして、これからも日本各地で身近な大切な存在であり続けていくことでしょう。
[2024-02-16作成/2024-10-11更新]
(c)ふるさと産直村