松前漬けと言えば函館というイメージが
松前漬けは、誰もが一度は口にしたことがある全国的な料理ですが、北海道・函館で作られた松前漬けは格別の味わいを堪能できます。
そのこだわり抜いた逸品は、ほかで味わうことができません。
函館産スルメイカの魅力
松前漬けはおせち料理などで使われるため、全国津々浦々で生産されていますが、なかでも北海道・函館の松前漬けは絶品とされています。
なぜなら、松前漬けに欠かせない食材の鮮度が他県とは一線を画しているからです。
たとえば、スルメイカ。函館は「イカの町」といわれるほど、イカが美味しいことで知られています。
函館産のスルメイカは透明度が高く、コリコリとした食感が楽しめると評判です。
松前漬けには、こうした最高級のスルメイカを使用します。
澄み渡った潮風で天日干しにして乾燥させて旨味を閉じ込めており、噛めば噛むほど味に深みが出てくるのです。
ヘルシーな昆布の旨味を凝縮
函館の昆布は「かごめ昆布」ともいわれ、粘り気が強いのが特徴です。
この粘り気にはアルギンサン、フコイダン、ラミナランなどの成分が豊富に含まれており、がんや動脈硬化、高血圧の予防などに効果が期待できるといわれています。
意外に思われるかもしれませんが、松前漬けの味つけでスルメイカと昆布は非常に重要な役割を担っています。
食感や風味、旨みなどは食材で決まるといっても過言ではありません。
漬けダレはこうした食材の旨みを最大限に引き出す効果があります。
函館の松前漬けが最高級に位置づけされる理由は食材にあるのです。
高級ブランド「松前」の秘密
松前漬けは、江戸時代ごろの松前藩(現・北海道南部周辺)の一般家庭で保存食として食べられていたことが発祥とされています。
長年培われた製法に改良を加え、最高級の松前漬けが生まれました。
伝統に裏打ちされた松前漬け
松前漬けは、函館山形屋の初代社長である海藤政雄さんによって、昭和12年に初めて商品化されたそうです。
それまでは函館を中心とした北海道南部の一般家庭で保存食として食べられていました。
厳しい冬を越すための発酵食として、珍重されたと伝えられています。
古くは塩漬けでしたが、近年は醤油漬けが一般的になっています。
江戸時代には松前藩(現在の北海道南部)から運ばれる昆布のことを「松前」と呼び、高級ブランドとして知られていました。
松前藩は蝦夷地と呼ばれた北海道にあった唯一の藩です。
蝦夷地では米が穫れなかったので、松前藩は海産物などの交易に頼るしかありませんでした。
ニシン、サケ、昆布漁はこの頃から盛んに行なわれており、一般家庭でも様々な調理法で食べられていたと考えられています。
こうして松前漬けは冬の間の保存食として出来上がっていきました。函館は松前漬けの元祖だといえるでしょう。
味の研鑽を重ねた漬けダレ
伝統に支えられた松前漬けは、函館を中心に味の研究が進められてきました。
とくに味付けの決め手となる漬けダレは、各店や家庭によって大きく異なります。
酒の肴だけでなく、白いご飯にそのままかけていただけるものもあります。
松前漬けの製造方法は様々ですが、基本的には以下の通りです。
乾燥したスルメと昆布の表面を濡れ布巾で拭いてから、はさみで細切りし、具は小さく切っておきます。
人参、生姜は、細く切っておき、このように下ごしらえした材料に、酒、みりん、醤油を鍋にいれ、いったん煮立ててから冷ました調味料をかけ、唐辛子を和え、1週間冷所に保存します。
かき混ぜるとヌルヌルする粘りが出てくるきますが、味がなじんだころが食べごろです。
使用する昆布はがごめ昆布、日高昆布などが一般的で、するめは足を取ったものを使用します。
製造方法はシンプルですが、それぞれの食材やこだわりの漬けダレなどを用いた松前漬けは、函館の一級品ならではです。
そのうえ、函館の松前漬けには、数の子や蟹、ふぐなど新鮮な高級食材をふんだんに使用しているものもあります。
北海道の“三宝”のひとつでもある数の子は、ひと粒ひと粒のプチプチとした食感で、まるで口の中で弾けるようだと食通の間でも高い評価を受けています。
また、毛ガニ、タラバ、ズワイガニはどれをとっても新鮮そのもので、プリプリと引き締まった身は、他では味わえません。
親しみのある味だからこそ、ワンランク上の松前漬けをぜひご堪能ください。